宇宙航空環境医学 Vol. 53, No. 4, 108, 2016

シンポジウム 6

「アストロバイオロジー」

2. 月・火星の地下空洞:探査と宇宙実験

春山 純一

宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所

Subsurface Voids on the Moon and Mars:Exploration to them and Experiment there

Junichi Haruyama

Japan Aerospace Exploration Agency, Institute of Space and Astronautical Science

今世紀に入って月や火星に,直径数10 mを超える縦孔が見つかってきている。これらは,地下に存在する巨大な空洞の天井部分に開いたものと考えられる。すなわち,見つかった縦孔は,月火星の地下空洞への入り口といえる。月火星の地下空洞を,この縦孔より入って直接探査し,また活用することが考えられる。月火星の地下空洞の探査によって科学的に多くの課題解決に資する情報が得られると考えられる。特に,火星の地下空洞は,紫外線から遮蔽されていることもあり,生命発生の痕跡,更には現存が確認できるかもしれない。また,地下空洞内は,紫外線や微小隕石が降り注ぐ月火星の表面と異なり,有人活動において非常に安全であり,基地建設の最適な候補地といえる。月火星において, 様々な有人無人の実験,観測の可能性が拡がるといえる。本講演では,月火星の縦孔・地下空洞を紹介し,それらの探査や,そこでの将来宇宙実験の可能性を論じたい。