宇宙航空環境医学 Vol. 53, No. 4, 104, 2016

シンポジウム 5

「宇宙エレベーター」

1. 宇宙エレベーター実現構想

石川 洋二

大林組

Space Elevator Construction Concept

Yoji Ishikawa

Obayashi Corporation

2012年に大林組が発表した「宇宙エレベーター建設構想」を紹介する。
 地上の大型構造物を数多く建設しながら,空の高みを求めて世界一の高さを誇る自立式タワー,東京スカイツリーを建設した。しかし,高さへの挑戦はさらに続く。 「宇宙エレベーター建設構想」では, 究極のタワーと位置付ける「宇宙エレベーター」を建設技術者の視点を交えながら,世界で初めての包括的な宇宙エレベーター像として構想した。講演では,宇宙エレベーターの意義と革新性を再確認しつつ,現在の科学技術の延長線上で2050年に建設が可能と考えられる宇宙エレベーターの姿を紹介し, その構成要素, 施工過程,構造安定性,各構造要素の詳細設計, 工程, コストを述べる。宇宙エレベーターは目的ではなく,宇宙への低廉な大規模輸送を可能にする未来の交通輸送を担う手段である。有人宇宙旅行,宇宙太陽光発電システムの建設によるエネルギー問題への貢献,宇宙資源採掘による地球での資源利用,宇宙空間を含めた三次元的なIT網の確立など,宇宙エレベーターは将来の人類の生活を一変させる可能性を秘めている。生命の進化に沿う人類の誕生や知性の獲得の流れの延長上にあると想定される,月や火星への人類の生活圏を拡げるという生命史の必然にとって宇宙エレベーターは不可欠のインフラストラクチャーになるだろう。この夢の計画を実現するために必要な技術開発,安全性確保の重要性についても触れる。