宇宙航空環境医学 Vol. 53, No. 4, 96, 2016

シンポジウム 2

「航空搬送(宇宙航空認定医シンポジウム)」

4. メディカルウイングのこれまでとこれから

岡田 眞人1,浅井 康文2

1北海道航空医療ネットワーク研究会,顧問
2北海道航空医療ネットワーク研究会,会長

Until now and future of Medical Wing

Masahito Okada1, Yasufumi Asai2

1Adviser of Hokkaido Air Medical Network
2Chairperson of Hokkaido Air Medical Network

メディカルウイングとは北海道航空医療ネットワーク研究会が平成22年9月6日から1ヶ月間,民間の寄付により北海道において実施された医療優先固定翼機の研究運航の成果を踏まえて,新たに北海道地域医療再生計画(平成23年度〜25年度)の一つとして行われた研究運航である。それぞれの年度において冬季気象条件での運航の課題,天候が安定している夏期での運航など検討課題を検討し,のべ12ヶ月間に要請が143件(一件は医師搬送)あり,出動が85件,キャンセル11件,天候不良などでの未出動が38件であった。実際の搬送では緊急搬送33件,準緊急搬送〔空港運用時間などで多少待機時間があったもの〕28件, 計画搬送24件であった。
 これらの結果からドクターヘリなどの回転翼機による医療搬送以外にも固定翼機による医療搬送ニーズが北海道においては存在することが立証されたが,運航に際して大きな問題となったのは冬季運航であった。これは主に使用した小型ジェット機(セスナC560)の製造メーカーが保証する滑走路凍結時の離着陸データが得られなかったことにより,かなり運航が制限された。この対策として関係省庁と協議を重ねて,平成25年6月には国際的な基準が適応されることとなり,使用滑走路上の凍結が25%以下であれば離着陸することが可能となった。
 これを受けて研究会では恒久的な体制構築の必要性を北海道庁に行うと共に,北海道医師会は日本医師会を通じて自民党に政策として実施するように要求した。しかしながら北海道だけを対象としたのでは実現困難であるとの回答を受け,研究会は日本全国でのニーズ調査を実施することになった。その結果,全国的にも長距離医療搬送ニーズがある程度存在することが判明し,日本医師会は全国的な医療用優先固定翼機が有用であるとして平成29年度の国家予算要求を行った。