宇宙航空環境医学 Vol. 53, No. 4, 95, 2016

シンポジウム 2

「航空搬送(宇宙航空認定医シンポジウム)」

3. 消防/防災ヘリの航空搬送〜名古屋市消防航空隊の例

纐纈 吉博

名古屋市消防局 消防航空隊

Air rescue and medical transport of Nagoya City Fire Bureau Air Corps

Yoshihiro Koketsu

Nagoya City Fire Bureau Air Corps

消防ヘリの歴史は,1967年東京消防庁に航空隊が発足,1970年大阪市,1972年神戸市・京都市,1973年名古屋市が5番目の航空隊として発足した。その後,横浜市など旧政令市12市(岡山市を除く)に1993年までに順に消防航空隊が発足した。
 1995年阪神淡路大震災を契機に,消防ヘリの重要性が取り上げられ,各都道府県において消防防災ヘリが発足し,現在では,東京消防庁・15政令市消防局で消防ヘリ31機,38道県で消防防災ヘリ40機,総務省消防庁5機の計76機が運用されている。
 阪神淡路大震災以降,大規模な地震災害,豪雨災害が各地で発生しており,このような大規模災害発生時には緊急消防援助隊の枠組みで消防防災ヘリが発生直後,多く出動し活動をしている。
 全国に消防防災ヘリ発足以降,出動件数は右肩上がりの状況が続き, ピークは平成23年7,775件となり,平成26年は7,061件となっている。平成23年東日本大震災では,出動977件,1,552名救助し,一つの災害における過去最大数を記録している。
 名古屋市消防航空隊平成27年の出動は火災86件,救助28件,救急7件の計121件である。火災出動の主な活動は上空からのテレビカメラによる情報送信である。火災の状況を地上の消防隊に送信し状況を伝えるものである。救助出動では,名古屋市は登山する山がないため山岳救助は皆無であり,河川,海での水難事故での活動が大半を占める。救急出動の大半は転院搬送である。名古屋市内の病院から県外への広域転院搬送を消防ヘリで行っている。
 救急の広域転院搬送については,消防ヘリでの搬送を提言するも,救急車での搬送を希望する病院も多くある。広域転院搬送には消防ヘリを活用していただけるよう消防ヘリの救急体制等を更にアピールしなければならないと考える。