宇宙航空環境医学 Vol. 53, No. 4, 94, 2016
シンポジウム 2
「航空搬送(宇宙航空認定医シンポジウム)」
2. 航空医療〜愛知県ドクターヘリの活動より
加納 秀記
愛知医科大学 高度救命救急センター
Helicopter emergency medical service─an activity introduction of “Aichi Doctor Heli”
Hideki Kano
Aichi Medical University, Advanced emergency medical center
【ドクターヘリとは】 救急処置を必要とする重篤な患者が発生した現場などに救急医療に精通した医師・看護師を派遣することを主目的とし,初期治療に必要な医療機器と医薬品を搭載した救急専用のヘリコプターである。ドクターヘリは単なる患者搬送システムではない。現場に医療チームが出向き,初期治療開始までの時間を短縮することが最大の目的である。さらに患者の状態を安定させ適切な高度医療機関に迅速に搬送することにより,救命率の向上や後遺障害の軽減等の効果が得られる。なお,愛知県ドクターヘリ事業は愛知県と国の共同事業で,費用負担は県と国が行っている。そのため患者にはドクターヘリの利用にかかる金銭的な負担は一切なく,保険診療の範囲内の費用負担(往診料,救急搬送料,治療費等)で済む。
【愛知ドクターヘリ配備について】 厚生労働省は,全国でドクターヘリ事業の条件を満たす病院を選定し,平成13年度から順次配備を進めている。愛知県では平成14年1月から愛知医科大学病院を基地病院として,全国で4番目のドクターヘリ事業が開始された。当院の医師・看護師が搭乗し,運航管理は中日本航空株式会社が担当している。
【ドクターヘリの活動】 ドクターヘリの要請は,一般市民の方が直接行うことはできない。一般市民から119番通報を受けた消防本部が,患者の傷病の程度に応じてドクターヘリを要請する。
【臨時着陸場について】 患者に可能な限り早く医療チームを送り込むことが必要である。そのため常設のヘリポートのみならず,救急現場近くの空き地,公園,学校や企業のグラウンド,河川敷などの臨時ヘリポートに着陸することもある。
【活動範囲】 活動範囲は原則愛知県内全域を対象とし,片道70 km圏内(25分)としている。隣県及び広範囲についても要請に応じて活動し,多数傷病者には隣県ドクターヘリとも協力して救命活動をしている。
【運航実績】 出動実績(平成26年度)現場救急258件,転院搬送14件,キャンセル106件,計378件
【ドクターヘリ事業に用いるヘリコプター】救急現場にも着陸が可能な小型機で,騒音が少ない機種を使用しており,人工呼吸器・心電図・除細動器などの救急用医療機器,医薬品等を常備搭載している。(愛知県:ユーロコプターEC135P2型)
【搭載医療機器】 モニター,人工呼吸器,除細動器,吸引器,シリンジポンプ,医薬品,外傷処置具など。