宇宙航空環境医学 Vol. 52, No. 4, 67, 2015

一般演題

23.　わが国における感染症患者の航空搬送の現状と課題

岡本　安裕¹，藤田　真敬²，立花　正一³

¹日立製作所　横浜健康管理センター　（元海上自衛隊　横須賀衛生隊長）
²航空自衛隊　航空開発実験集団　航空医学実験隊　第 2 部
³防衛医科大学校　防衛医学研究センター　異常環境衛生研究部門

Review of the aeromedical evacuation of the patient with infectious disease in Japan

Yasuhiro Okamoto¹, Masanori Fujita², Shoichi Tachibana³

¹Director Occupational Physician Yokohama Health and Welfare Center Hitachi Co. Ltd （Former Commanding Officer of JMSDF Yokosuka MSU）
²Second division, Aeromedical Laboratory, Air Development and Test Command, Japan Air Self-Defense Force （JASDF）
³Division of Environmental Medicine, National Defense Medical College Research Institute, National Defense Medical College

わが国では患者の航空搬送は各自治体の責任とされているが，その能力を超える場合は，自治体の首長が自衛隊に対して災害派遣要請ができる。自衛隊はこの要請を受けると，行動命令に基づき急患搬送を実施することになる。日常的には北海道，東京都，長崎県，沖縄県等の離島において実施されているほか，先の東日本大震災のような大規模災害発生時には自衛隊の役割と活動への期待が高まる。航空搬送の対象者に感染症（あるいはその疑い）患者が含まれる場合がある。感染症患者の搬送には特別の装備·体制と配慮が必要だが，我が国においてはこれまで重症感染症のパンデミックな発生は少なく，その対処要領については十分に検討がなされてきたとは言えない。今回の発表では，この現状を踏まえ今後のわが国の感染症患者の航空搬送に関しての課題を指摘し，今後の展望を述べる。