宇宙航空環境医学 Vol. 52, No. 4, 66, 2015

一般演題

22. 成田国際空港クリニックにおける救急症例の検討

赤沼 雅彦,松浦 直子

日本医科大学成田国際空港クリニック

Examination of the Emergency Case in Narita International Airport Clinic

Masahiko Akanuma, Naoko Matsuura

Nippon Medical School Narita International Airport Clinic

日本医科大学成田国際空港クリニックは空港内無床診療所として365日体制で診療している。通常診療は9時から17時または18時(月·木曜日)まで,救急診療を17時または18時から翌朝9時まで実施している。今回当クリニックにおける救急患者の特徴を検討してみた。
【背景と方法】 主な空港内診療機関は第2ターミナルの当クリニックと第1ターミナルの國手会空港クリニック(平日9時から17時まで)の2か所である。また,直近の救急病院でも8.5 kmあり,同一法人の日本医科大学千葉北総病院へは26 km·救急車で40分程度の道のりである。また,救急患者の定義は時間帯ではなく,救急車で搬送,担架や車椅子で搬送された患者とウォークイン患者でも救急車で転院搬送された患者と定義した。年間症例は1992年の開院から2011年3月までと2011年度から2014年度までを旅客と旅客外を分けて比較検討した。
【結果】 当クリニックの年間症例は1992年の開院以来概ね13,000から14,000名程度であり,その内450から550名が救急患者であった。直近の3年間では救急患者は徐々に減少傾向であった。患者の内訳は空港勤務者や航空機搭乗員が約68%で,旅客は約27%であり,残りがその他であったが,救急患者では旅客が約84%で,空港勤務者や航空機搭乗員が約12%で旅客が主となった。疾患別で検討すると救急患者全体では開院から2011年3月までは急性腹症が最も多かったが,2011年度はその他が,2012年度以降は感染症が最も多かった。旅客の救急患者でもほぼ同様であったが,旅客外では2012年度は感染症が最も多かったが,それ以外はすべてその他が最も多かった。
【考察】 2012年度から旅客の急性胃腸炎を急性腹症から感染症に分類するように変更したことも大きく影響している。救急患者のうち救急車での搬入件数が減少しているが,入院必要症例が直近の救急病院に直接搬送されるようになったためと考えられた。当クリニックの救急患者は旅客の急性胃腸炎による脱水の症例が最も多いことが推定された。その他の疾患はめまいや過換気症候群などが多いと考えているが,疾患分類ごとの内容についての検討が必要と考えられた。