宇宙航空環境医学 Vol. 52, No. 4, 64, 2015

一般演題

20. 悪性疾患における航空医学適性判定の計算法の提言

燗c 邦夫,立花 正一

防衛医科大学校 防衛医学研究センター 異常環境衛生研究部門

Proposal for a new calculation method to assess aeromedical fitness of pilots with malignant disease

Kunio Takada, Shoichi Tachibana

Division of Environmental Medicine, National Defense Medical Collage Research Institute

ICAOの定めるManual of Civil Aviation Medicine(MCAM)の「悪性疾患」の章には悪性疾患の年間機能喪失率(1年間の機能喪失を起こす確率)の計算法が示され,我々はMCAMを基にした新たな計算法の提言を行いたい。
MCAMでは,年間機能喪失率が1%以下であれば航空医学適性(適性)を認めるルール(1%ルール)が基本的な考えである。
ある悪性疾患のステージ分類等のリスク層別化された「年間死亡率」と「年間再発率」が近いと考えられる場合,言い換えると,治療後(悪性疾患に関する異常所見が認められなくなった状態)の再発のほぼすべてが死亡に至る場合,治療後の「年間担癌率」は「年間死亡率2」に近い値と考えられる。もし,その悪性疾患の年間担癌率が1%以下であれば,1%ルールに基づき適性を有すると判定できる。
ただし,以下の点に留意する必要がある。
@ 「年間死亡率」と「年間再発率」に大きな差があると考えられる悪性疾患の場合は,この計算法の使用は適当でない。
A リスク層別化された年間死亡率は,より詳細な分類があればそれを利用すべきであろう。
B この方法で得られた結果は参考値であるので,医学的合理性に基づいた航空医学適性判定法も合わせて取り入れるべきである。