宇宙航空環境医学 Vol. 52, No. 4, 61, 2015

一般演題

17. 加速度訓練時に認めた不整脈の検討

峰 政貴1,西山 潔2,稲田 真3,竹内 誠2,辻本 由希子2

1航空幕僚監部 首席衛生官付
2航空自衛隊 航空医学実験隊
3航空自衛隊 硫黄島基地隊

The analysis of arrhythmia occurrence during high-G training

Masataka Mine1, Kiyoshi Nishiyama2, Makoto Inada3, Makoto Takeuchi2, Yukiko Tsujimoto2

1Japan Air Self Defense Force Air Staff Office Staff of Surgeon General
2Japan Air Self Defense Force Aeromedical Laboratory
3Japan Air Self Defense Force Iwoto Base Corps

【背景及び目的】 航空自衛隊航空医学実験隊では,操縦士等に対して遠心力発生装置を用いた加速度訓練を実施している。これまでにも当施設からは,加速度訓練時に認められた不整脈(G-induced arryhthmia)に関する報告を行ってきた。今回,当施設にて蓄積された加速度訓練時に不整脈を認められた症例において,診断,治療及び機種制限等について検討を行ったので報告する。
【方法】 平成27年3月までに加速度訓練時に不整脈を認められ,訓練中止又は精査を要した43症例を対象とし,医学適性審査資料を参考とした後ろ向き検討を行った。主検討項目を最終的な操縦士としてのフライトに関する制限等,副検討項目を年齢,発症G,症状,精査,診断及び治療等とし,解析を行った。
【結果】 全43症例のうち,頻脈性不整脈群38症例,徐脈性不整脈群5症例であった。更に頻脈性不整脈をnarrow QRS群とwide QRS群に分け検討を行い,前者が24症例(平均年齢25.0歳(21-44歳),平均不整脈持続時間26.9秒(3-120秒),症状あり4名(G-LOC 2症例,Gray-out及び動悸各1症例)),後者が14症例(平均年齢24.3歳(20-37歳),平均不整脈持続時間57.9秒(3-600秒)),症状あり1症例(G-LOC)であった。このnarrow QRS群24症例のうち,電気生理学的検査(Electro Physiological Study:EPS)で診断が確定したのは17症例であり,更に高周波アブレーション術により根治に成功した13症例は高機動機操縦士として業務を行っている。同様にwide QRS群14名のうち,EPSで診断が確定した8症例は全て治療が奏功しており,持続時間が短く,EPSにて再現性を認めなかった3症例と併せ,11症例が高機動機操縦士として業務を行っている。徐脈性不整脈群5症例は,全てEPS等での再現性はなく,4-6 Gの比較的低いGで誘発されており,症状を有する症例が3/5(60%)と多く,全例が高機動機以外の機種に制限されていた。
【結語】 G-induced arrhythmiaの治療適応及び航空医学適性の評価基準等については,引き続き症例の蓄積が必要である。