宇宙航空環境医学 Vol. 52, No. 4, 50, 2015

一般演題

6. 重力感受性障害(Gravity Perception Disturbance, GPD)の疾患概念

和田 佳郎,山中 敏彰

奈良県立医科大学 耳鼻咽喉科

Concept of gravity perception disturbance

Yoshiro Wada, Toshiaki Yamanaka

Department of Otolaryngology, Nara Medical University

【背景】 めまい·平衡障害の一つとして重力センサーの耳石器に起因する重力感受性障害(Gravity Perception Disturbance, GPD)の存在が推定されているが,重力感受性を評価する臨床検査法が普及していないため広く認められているとは言えない。そこで,重力感受性を簡便に評価できる臨床検査法として,頭部roll傾斜時の自覚的視性垂直位(Subjective Visual Vertical, SVV)と頭部傾斜角度から頭部傾斜感覚ゲイン(Head Tilt Perception Gain, HTPG)を算出する頭部傾斜SVV法(HT-SVV法)を確立した。
【目的】 GPDの疾患概念を検討する目的で,HT-SVV法を用いて健常人とめまい患者の重力感受性を比較した。
【方法】 健常人329名(19-88歳,平均34.5歳)と各種めまい患者114人(13-88歳,平均56.8歳,メニエール病36人,末梢前庭障害12人,BPPV5人,心因性めまい5人,前庭神経炎4人,突発性難聴3人,起立性低血圧3人,聴神経腫瘍2人,真珠腫性中耳炎2人,片頭痛関連めまい2人,その他8人,めまい症32人)を対象に,座位にてHT-SVV法を実施した。
【結果】 健常人の測定結果から,HT-SVV法における重力感受性の指標である頭部直立SVV(基準値:2.5度以下),HTPG(0.8-1.25),HTPGの左右差指数(10%以下)の基準値を定めた。今回対象としためまい患者の中で基準値外であったのは,頭部直立SVVでは33.3%,HTPGでは36.8%,HTPGの左右差指数では27.2%,3つの指標の1つ以上が基準値外であったのは61.4%であった。
【考察】 HT-SVV法によりめまい患者の過半数にGPDが認められた。今後,HT-SVV法の各指標の診断意義を確立し,GPDの疾患概念を確立していきたい。
【謝辞】 本研究は研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)の支援を受けて行なった。