宇宙航空環境医学 Vol. 52, No. 4, 49, 2015

一般演題

5. 中年期女性の皮膚の潤いおよび弾力性と加齢の関係について

大野 秀夫,西村 直記,岩瀬 敏

愛知医科大学医学部 生理学講座

Comparison of hydration and elasticity of skin between young and middle-aged women

Hideo Ohno, Naoki Nishimura, Satoshi Iwase

Aichi Medical University, The Department of Physiology

【はじめに】 皮膚は加齢に伴いカサつきやすくなり,皮膚変形後の戻りもわるくなる(すなわち弾力性が低下する)。青年期には豊富な角質細胞間脂質で皮膚水分は保持されているが,これらは加齢とともに減少するためにバリアが弱まり潤いは低下する。とりわけ女性は中年期に入ると女性ホルモンの急激な減少が生じるために表皮ヒアルロン酸が減少し水分保持力が低下する。しかし,加齢は一方では皮膚バリアを強化に貢献もする。すなわち表皮角化のターンオーバーが長くなるため角質細胞が大きくなり,その堆積層も増すためにバリアはさほど低下しないともいわれる。加えて女性ホルモンの減少によって皮脂分泌が抑制されにくくなり,バリア低下を減らす意味をもつという説もあり,ターンオーバー長期化と合わせて加齢によるバリア低下の代償反応とも考えられる。一方,弾力性については加齢に伴う真皮の線維芽細胞の減少によるものであるという報告は多数あるが,これを代償する皮膚の変化の可能性は具体的には報告されていない。筆者らは中年期と青年期の女性各7名を被験者として顔の潤いと弾力性に関わる代表的パラメーターを測定し,加齢の影響を前者については生物物理的に,後者については生物機構学的に検討した。
【実験方法】 青年群(19〜20歳)を2013年冬,中年群(40〜48歳)を2012年冬に,愛知医科大学環境生理学教室(室温23〜24°C,相対湿度35%)で前額,外眼角,頬の3部位を測定した。皮膚潤いは角質層水分量を皮膚コンダクタンスで測定(Skicon200EX, IBS, Japan)。経皮水分蒸散量TEWL(Vapometer, Delfin, Finland)および皮表脂質(Sebumeter, Courage+Khazaka, Geramany)を測定した。皮膚弾力性は-300mBarで吸引時の変位量および吸引解除直後の戻り率を測定した(Cutometer, Courage+Khazaka)。
【結果】 皮膚の生物物理指標である皮膚コンダクタンス,経皮水分蒸散量TEWLおよび皮表脂質においてはいずれの部位においても群間に統計学的に有意な差はなかったが,TEWLは中年群が頬において多い傾向を示した。生物機構学特性である皮膚の変位量および弾性率においては有意な群間の差があった。すなわち変位量は青年群が多く,弾性率も青年群が高かった。
【結論】 青年女子と閉経前の中年女子の皮膚潤いと弾力性を比較すると皮膚潤いに明瞭な差はないが,皮膚吸引時の変位量や吸引解除後の戻り率には年齢間の差が明瞭に現れた。