宇宙航空環境医学 Vol. 51, No. 4, 84, 2014

一般演題

28.　国際宇宙ステーションにおける上肢筋力測定法

松瀬　博夫¹，志波　直人¹，大本　将之¹，高野　吉朗²，山田　深³，大島　博³，田川　善彦⁴

¹久留米大学リハビリテージョン部
²国際医療福祉大学福岡保健医療学部
³宇宙航空研究開発機構
⁴九州工業大学大学院工学研究院

Measurement of the Upper Arm Strength in the International Space Station

Hiroo Matsuse¹, Naoto Shiba¹, Masayuki Omoto¹, Takeshi Nago², Yoshio Takano², Shin Yamada³, Hiroshi Ohshima³, Yoshihiko Tagawa⁴

¹Division of Rehabilitation, Kurume University Hospital
²Department of Physical Therapy School of Health Sciences at Fukuoka, International University Health and Welfare
³Japan Aerospace Exploration Agency
⁴Department of Mechanical and Control Engineering, Kyushu Institute of Technology

　ハイブリッドトレーニングシステム（HTS）は，拮抗筋の電気刺激筋収縮を主動筋の運動抵抗とする運動で微小重力下でも外力を用いずに運動抵抗を得ることができる。国際公募国際宇宙ステーション利用研究として，2014年に宇宙飛行士を被験者とした軌道上でのHTS検証実験を計画した。実験では一人の宇宙飛行士が自分自身で非利き手上肢のHTSを実施し，両側上肢筋力の評価を行う。そのため，微小重力環境下でも一人で測定可能な筋力測定法が必要である。そこで，固定治具を用いた徒手把握式筋力計での立位で行う上肢筋力測定法を考案した。固定治具として，手関節固定グローブと身体固定ベルトを作成し，精密な筋力測定装置であるKIN-COMと比較し精度を検証した。手関節固定具グローブ使用に際して，等尺性肘関節屈曲筋力計測の変動係数（CV）は，手関節固定グローブなしは29.8%，手関節固定グローブありは29.7%，KIN-COMは26.0%であった。等尺性肘関節伸展筋力計測のCVは，手関節固定グローブなしは39.2%，手関節固定グローブありは39.0%，KIN-COMは41.1%であった。身体固定ベルト使用に際して，等尺性肘関節屈曲筋力計測のCVは，KIN-COMは31.9%，体幹固定ベルトなしは25.0%，体幹固定ベルトありは24.1%であった。等尺性肘関節伸展筋力計測のCVはKIN-COMは33.4%，体幹固定ベルトなしは28.4%，体幹固定ベルトありは32.2%であった。次に，3回測定した時の級内相関係数を用いて信頼性を評価した。級内相関係数は，屈曲筋力計測0.949，伸展筋力計測0.967であった。また，航空機実験にて微小重力環境下でも筋力測定が実施可能かを検証した。考案した方法は，微小重力環境下でも測定可能で，KIN-COMと比べても精度が劣ることなく高い信頼性を有していた。