宇宙航空環境医学 Vol. 51, No. 4, 76, 2014

一般演題

20. 成田国際空港クリニックにおける診療症例の2012年2013年度の比較

赤沼 雅彦,松浦 直子

日本医科大学成田国際空港クリニック

Patients of Narita International Airport Clinic in 2012 and 2013

Masahiko Akanuma, Naoko Matsuura

Nippon Medical School Narita International Airport Clinic

 【背景】 日本医科大学成田国際空港クリニックは空港内診療所として365日体制で診療している。通常診療は午前9時から午後5時まで,救急診療を午後5時から翌朝9時までで実施。2013年5月より祝祭日以外の月·木曜日の通常診療時間を午後6時まで延長した。また,2011年から国内にもLCC航空会社が設立され,成田空港では2012年7月にジェットスタージャパンが成田—札幌線に就航し,それ以来エアアジアジャパン後にエアアジアが撤退し,現在バニラエアそして春秋航空日本が国内線を中心に次々と路線を就航させている。従って,空港利用者も変化しており,2012年度から13年度へ空港利用者の増加は国内線で39%であり,国際線で4%であり,全体で8%の増加であった。そこで2012年度と2013年度の診療実績を比較検討した。また,診療統計を2013年3月まで初診(新規カルテ作成患者)と再診(カルテID登録のある患者)に分類していたが,2013年4月より・V規患者と(保険診療上の)初診と再診に分類した。
 【結果】 総診療患者数は12年度13,669人から13年度13,784人となり,患者数はわずか0.84%増加であった。新規患者も約46%で変化なく,初診,再診はそれぞれ34%,20%で再診患者が大変少なかった。患者背景では空港勤務者や旅客はほぼ同じ比率であったがクルーは5.6%から6.1%とやや増加,また外国人の比率も7.1%から7.7%へわずかに増加していた。救急患者(車椅子·担架·救急車またはウォークイン後救急搬送)数は554人から505人に減少していたが,主に車椅子による搬送患者数が減少していた。疾患別の検討で12·13年度は全体では同様であった。救急患者でも旅客ではほぼ同様であったが,旅客外(空港勤務者·乗務員·その他)では13年度はその他が多く,12年度は感染症と呼吸器疾患が多かった。
 【まとめ】 12年度と13年度のクリニック診療実績(患者数0.84%増加,患者背景)には大きな変化はなかった。疾患別の検討で12·13年度は全体では同様であり,救急患者でも旅客ではほぼ同様であった。救急患者旅客外(空港勤務者·乗務員·その他)では13年度と12年度で違いがみられた。