宇宙航空環境医学 Vol. 51, No. 4, 75, 2014

一般演題

19. 当院における小児の航空搬送について

野田 慶太

熊本赤十字病院

The child transportation by helicopter at Japanese Red Cross Kumamoto Hospital

Keita Noda

Japanese Red Cross Kumamoto Hospital

 現在だけでなく,今後も少子化がすすんでいくことが示唆されており,小児医療の集約化が検討·実施されている。
 集約化がすすんだ場合には長距離搬送が必要になると考えられ,その際には航空機での搬送もより重要な搬送手段になる。
 当院は2012年5月に西日本初の小児集中治療病棟 (PICU)を開設し,2013年5月より小児救命救急センターの指定を受けている。また,2012年1月より当院を基地病院とし,熊本県のドクターヘリ事業を行っている。
 熊本県内において小児救急患者の受け入れ可能な病院は多くはなく,特に小児の外傷症例や集中治療を要する症例の多くは当院に集約している。
 救急科専従の医師がフライトドクターとして搭乗し,救急隊から要請のあった現場での診療にもあたっている。救急科専従医は救急外来において小児の診療にも従事しているが,小児科医の協力もあり,成人の診療と比較して頻度は高くない。
 今回フライトドクターの行う小児の航空搬送の現状を把握するための検討を行った。2012年1月〜2014年8月における,ドクターヘリでの小児搬送症例における現場活動時間,搬送時間,搬送距離についてカルテ·搬送記録を後方視的に検討し,成人の当院搬送症例·全搬送症例と比較した。いずれの項目に関しても成人症例と比較して有意な差はなかった。
 小児の航空搬送も成人と同様の対応ができており,早期の医療介入および迅速な搬送の一翼を担っていると言える。
 また,集約化がすすむ中でも,成人と同様に地域の中核病院の果たす役割は大きく,そこで初療を行った後に転院となる症例もあった。
 今後も小児の航空搬送は増加すると考えられ,小児の診察·手技への修練も継続して必要である。