18.　加速度訓練時に認めた不整脈の3例 | Three cases of arrhythmia occurrence during high-G training

一般演題

18.　加速度訓練時に認めた不整脈の3例

峰　政貴¹，若栗　隆志¹，小西　透²，稲田　真¹，辻本　由希子¹，桒田　成雄¹

¹航空自衛隊　航空医学実験隊
²航空幕僚監部　首席衛生官付

Three cases of arrhythmia occurrence during high-G training

Masataka Mine¹, Takashi Wakaguri¹, Toru Konishi², Makoto Inada¹, Yukiko Tsujimoto¹, Naruo Kuwada¹

¹Japan Air Self Defense Force Aeromedical Laboratory
²Japan Air Self Defense Force Air Staff Office Staff of Surgeon General

　【はじめに】　航空機のG環境下における身体的な問題は，航空安全に大きな影響を与える。特に，Gによる意識消失（G induced Loss of Consciousness，以下「G-LOC」という。）の原因は多岐に渡り，対策は困難な場合がある。航空自衛隊航空医学実験隊では，操縦士等に対して加速度訓練を実施しており，そのデータを蓄積し，G-LOC発生機序等の調査及び研究を行っている。この加速度訓練時にはモニター心電図を記録している。今回，G-LOCの原因となり得る不整脈を認めた操縦士の3例を経験し，それらの操縦士としての航空医学的な適性について検討を行ったので報告する。
　【症例1】　23歳男性，5 G及び6 G負荷後にP波の欠如した徐脈があり，視覚症状（眼前暗黒感）を伴っていた。心臓電気生理学的検査（Electro-Physiological Study，以下「EPS」という。）等の精査を行われるも明らかな器質的異常は認められなかったが，状況（耐G動作及び訓練に対する緊張等）から迷走神経反射による徐脈が最も考えられ，G負荷時の再発が危惧されたことから機種を制限されることとなった。
　【症例2】　23歳男性，6 G及び7 G負荷中に自覚症状を伴わない徐脈を認められた。EPSにて明らかな病的異常は認めらなかったが，種々の刺激でAH伝導遅延が認められた。耐G動作等によりAH伝導遅延を来たした可能性があるため，当初高G負荷を制限されることなった。
　【症例3】　23歳男性，1.4 Gのアイドリング中に自覚症状を伴わないwide QRSの頻脈を認められた。EPSにて変行伝導を伴う心房頻拍と診断され，同部位をカテーテルアブレーションにて焼灼された。再度加速度訓練を受け，再発を認めなかったため，機種の制限等は受けず，航空業務に復帰した。
　【考察】　加速度訓練時の心電図モニタリングにより，G-LOCの原因となりうる不整脈をスクリーニングできる可能性がある。しかし，加速度訓練及びEPS時に認められる不整脈が，実際の航空機の機動時に再現されるものであるかは引き続きの調査，研究及び追跡が必要である。
　【まとめ】　実際の操縦環境と異なるものの，加速度訓練時の不整脈は，操縦士の航空医学的な適性を検討する上で重要な要因である。