宇宙航空環境医学 Vol. 51, No. 4, 65, 2014

一般演題

9. ハーブティー療法を施行したメニエール病患者のめまい症状およびQOLの変化

北島 尚治1,2,北島 明美1,3,北島 清治1

1北島耳鼻咽喉科医院
2東京医科大学 耳鼻咽喉科
3聖マリアンナ医科大学 耳鼻咽喉科

Evaluation of symptoms and QOL in Ménière's disease treated with herbal tea

Naoharu Kitajima1,2, Akemi Sugita-Kitajima1,3, Seiji Kitajima1

1Kitajima ENT Clinic
2Department of Otolaryngology, Tokyo Medical University
3Department of Otolaryngology, St. Marianna University School of Medicine

 【はじめに】 メニエール病はその病態が内リンパ水腫であること以外,病因や発症機序は不明の難治性疾患である。治療は内リンパ水腫改善を目的とした利尿薬やステロイドを中心とした薬物療法のほか,重症・E痰ナは内リンパ・X開放術など外科的療法も行なわれる。また二次性のうつ症状を生じるほか,ストレスや心因性要素による再発や症状悪化があることからSSRIなどの精神安定剤を併用する場合も多い。しかし多くは急性期に対する治療であり,緩解期における治療法は確立されていない。今回我々はメニエール病緩解期治療としてハーブティー療法(Herbal Tea Therapy;HTT)に注目し,HTTを施行したメニエール病患者の各種検査結果を非HTT群と比較するとともに,SF-36(MOS Short-Form 36-Item Health Survey)を用いて日常生活におけるQOLの変化を追うことで興味深い結果を得たので報告する。
 【対象と方法】 対象は外来受診したメニエール病患者のうち,HTTに同意,施行した24名である。これらをめまい·難聴·耳鳴の3症状全てが生じる確実例15例(男性7例·女性8例,年齢61.3±12.4歳(mean±SD))をHTT A群,めまいが乏しく蝸牛症状(難聴·耳鳴)が主体の軽症例9例(男性1例·女性8例,年齢45.8±18.8歳(mean±SD))をHTT B群と分類した。また発症時期の異なるメニエール病確実例患者10例(男性4例·女性6例,年齢54.5±13.7歳(mean±SD))をコントロール群とし非HTT群と称した。ブレンドハーブは利尿効果,抗めまい効果,抗ストレス効果を期待して配合し,HTT A群向けのブレンドA,HTT B群向けのブレンドBの2種類を用意した。急性発作後半年間の経過観察ののちこれらの服用を開始し1年間経過を追ったのち非HTT群とし比較検討した。全症例に対して聴覚や内耳機能検査,QOL評価としてSF36を定期的に施行した。また再発時には症状に応じて3群とも同様の治療を行なった。
 【結果】 HTTを行なった24例全てにおいて,ハーブティーによる有害事象はなかった。非HTT群では50%が再発したが,HTT·A群では33%にとどまりB群では再発をみとめなかった。またSF-36の結果は非HTT群と比してHTT両群ともに精神的QOLの改善が顕著だった。
 【考察】 メニエール病には心因性要素やストレスが強く影響している場合が多く,感情的·精神的ストレスが発作のトリガーとなる可能性も指摘されている。緩解期においてHTTは利尿作用や抗めまい作用などに加えて,リラックス作用,抗ストレス作用により発作のトリガーを抑えることで再発予防に貢献をしている可能性を考えた。またHTTは治療目的のみでなく過酷な特殊環・ォ・Eコでの作業員・スちの精神的疲労を軽減する食事療法として有用ではないかと考えた。(日本補完代替医療学会誌9(3) 9-17 2012;Medical Herb 24 22-25 2013)