宇宙航空環境医学 Vol. 50, No. 4, 102, 2013

市民公開講演会

宇宙の食事とトイレ事情

小野寺 昇1,澤岡 昭2,裏出 良博3,小林 智之4,田淵 光彦4

1川崎医療福祉大学
2大同大学
3筑波大学
4宇宙航空研究開発機構

Reasons of the meal and restroom of the space

Sho Onodera1, Akira Sawaoka2, Yoshihiro Urade3, Tomoyoki Kobayashi4, Teruhiko Tabuchi4

1Kawasaki University of Medical Welfare
2Daidou University
3Tsukuba University
4 Japan Aerospace Exploration Agency

国際宇宙ステーション(ISS)における医学的な研究の成果は,宇宙飛行士と地上サージャンの知識と技術による成果である。輝かしい多くの知見に注目が集まる。しかしながら,ISSにおける宇宙飛行士の日常に関する情報は,一部の範囲の人たちの共有に留まっている。地上に暮らす我々と同様に宇宙飛行士にもISSにおける日常が存在する。この市民公開講演会は,宇宙飛行士の食事·睡眠·トイレなどの日常を子供達の質問に答える形式で解説し,ISSの暮らしの様子を広く周知することを念頭に開催した。市民への公開講演会の趣旨に沿い本学会の初めての試みとして,暮らしの中でも情報が得られるようにFMくらしき(82.8 MHz)の番組として2時間(11:00〜13:00)の生放送を行った。宇宙飛行士の勤務時間は,8時間(2時間のエクササイズを含む)である。睡眠時間として8時間が割り当てられ,残りの8時間がいわゆる自由時間になる。この8時間の暮らしに生じる子供達の疑問を生活編·食事編·トイレ編に分け,小野寺が司会を担当し,4名の演者が質問に対して解説した。生活編;質問: 「お風呂はありますか。顔をどうやって洗うのですか。洗濯はできますか。いつ着替えるのですか。目薬はどうやってさすのですか。病気になったらお医者さんにかかれますか。」解説:「お風呂はありません。顔や体は水を含ませた濡れタオルで拭きます。洗濯はできません。下着は毎日か2日に一回着替えます。他の衣類は一週間くらいで着替えます。着替えは自由時間にします。着替えた衣類はプログレス補給船にしまいます。ISSでも地上と同じように歯ブラシと歯磨き粉を使って歯磨きします。目薬の容器を押し,容器の先に目薬を球状に出します。それを眼球に近付け,接触させる方法で目薬をさします。必要に応じて地上からフライトサージャン(宇宙飛行士の健康管理を行う専門医)の診断·カウンセリングを受けることができます。ISSの宇宙飛行士には救急医療を担当するクルー·メディカル·オフィサーがいます。打ち上げ前に歯の治療を済ませ,健康な状態で宇宙に行きます。」食事編; 質問:「美味しいですか。一日に何回食べるのですか。どうやって食べるのですか。」解説:「地上とほとんど同じものを食べることができます。宇宙日本食は,外国の宇宙飛行士にも人気があります。ラーメンもあります。チョコレートなど個人の好みでISSに持ち込むものをおやつとして食べることもできます。スプーン,フォーク,はしを使っています。もちろんテーブルがあり,1日に3食食べます。食事係りはいませんから,自分の食事は自分で準備し,自分で後片付けをします。」会場において宇宙カレーと市販のカレーの比較試食会を開催した。実際の宇宙カレーを食べることによる体験を通してISSの日常に触れる機会を設けた。用意した食材をすべて消費した。トイレ編; 質問:「ISSのトイレは,いくつですか。水洗ですか。」解説: 「2つです。水洗ではありません。ファンを回して尿と便を吸い込むような仕組みになっています。トイレットペーパーを使います。いつでもトイレに行くことができます。打ち上げのときだけは,緊急時に備えておむつを装着します。」質問:「オナラで宇宙飛行士が飛びますか。」解説:「理論上は飛びます。飛ぶ程の大きなオナラをすることは難しいと思います。」以上は,質問の一部である。銀河鉄道999などの曲を交え,2時間の生放送を予定通りに終了した。