宇宙航空環境医学 Vol. 50, No. 4, 101, 2013

ランチョンセミナー

宇宙での体力低下防止

大平 充宣

同志社大学

Prevention of detrimental response of physical fitness level in space

Yoshinobu Ohira

Doshisha University

宇宙の微小重力環境への暴露は,生体諸機能にさまざまな適応を誘発し,地球への帰還後は重力下での生活に支障を招くものもある。重力に抗した筋活動不足に起因した典型的な適応は,抗重力筋の萎縮や速筋化および骨の退化である。従って,このような現象を防止するためのcountermeasuresとして,各種の運動が処方されている。ところが,地球上と同一の運動機器を使用した運動中は,微小重力環境でも筋の動員様式が同じとは限らない。たとえば,微小重力環境暴露で萎縮しやすいヒラメ筋の適応防止が望まれるわけであるが,必ずしも目指す効果は得られていない(J. Physiol., 1999 & 2010;J. Appl. Physiol., 2009)。同じような運動でも,下肢筋筋電図パターンは,地上と宇宙では異なるという報告もある(J. Exp. Biol., 2001)。原因としては,微小重力に起因した筋の機械的活動量の減少,動員パターンの変化,下肢筋における血液分布の低下等に加えて,筋動員パターンの個人差等も考えられる。そこで,特に微小重力環境暴露への抗重力筋の反応とその防止策,およびこれらの機構における感覚神経の役割に注目しながら,より効率的な運動処方の開発を目指した検討を加えたい。