宇宙航空環境医学 Vol. 50, No. 4, 98, 2013
認定医セミナー |
「航空宇宙医学における検疫,防疫,感染症防護」 |
4. 国際宇宙ステーション船内における環境真菌とその変遷
槇村 浩一1,山崎 丘1,2
1帝京大学
2宇宙航空研究開発機構
Changing of environmental fungi on board International space station
Koichi Makimura1, Takashi Yamazaki1,2
1Teikyo University
2Japan Aerospace Exploration Agency
国際宇宙ステーション日本実験棟「きぼう」の船内環境における微生物研究プロジェクト研究は,演者らの研究グループによる1998年の予備的検討(地上研究)から継続的に行われ,2009年以降は宇宙航空研究開発機構(JAXA)との共同研究·軌道上実験として,「きぼう」における環境および常在微生物叢と宇宙飛行士の健康障害に関する研究(Microbe-I 2009,およびMicrobe-II 2010,Microbe-III 2012),ならびに宇宙ステーションに滞在する宇宙飛行士の身体菌叢評価研究 (Myco:主任研究者JAXA向井千秋室長) が実施された。この間に,「きぼう」は(培養に基づいた)微生物学的無菌的環境から,クルーの出入りと生活とに由来する真菌の散布と定着·発育環境へと経時的に変化してきた。現在までに,「きぼう」から得られている真菌は,一般の都市的環境における室内から分離される菌叢であり,直ちにクルーへの健康障害をもたらすものとは考えられない。しかし,その中にも日和見真菌症の原因菌や,カビ毒産生菌が含まれていることも事実である。宇宙環境下において,宇宙飛行士が様々なストレスにさらされ,時に免疫力の低下を引き起こしかねない状況にあることは広く知られている。特に今後想定される長期ミッションにおいてこれら真菌叢と健康障害,ならびにその管理は重要な課題となるものと考えられる。