宇宙航空環境医学 Vol. 50, No. 4, 97, 2013

認定医セミナー

「航空宇宙医学における検疫,防疫,感染症防護」

3. 国際宇宙ステーションにおける感染防御

三木 猛生1,山村 侑平2,嶋宮 民安2,馬場 尚子2,緒方 克彦1

1宇宙航空研究開発機
2有人宇宙システム株式会社

Protection against infection on ISS

Takeo Miki1, Yuhei Yamamura2, Tamiyasu Shimamiya2, Naoko Baba2, Katsuhiko Ogata1

1Japan Aerospace Exploration Agency
2Japan Manned Space Systems Corporation

人間が快適に過ごすことのできる環境は多くの微生物にとっても共存しやすい環境である。国際宇宙ステーション(以下,ISS)内は約1気圧,摂氏18から28度,湿度30から60%に調節されており,微生物にとっても存在しやすい環境と言える。また,人間にとって,飛散した微生物は,沈降せず浮遊時間が長いため,呼吸器や消化管からの感染の機会を増やす可能性がある。地上から持ち込まれた微生物が様々な感染症を引き起こすだけではなく,機器の不具合も誘発し二次的に宇宙飛行士を危機に曝す可能性がある。また,国際宇宙ステーションは閉鎖環境であり,感染症となれば一度にすべての飛行士が罹患する可能性があり,ミッション遂行への影響は大きいと考えられる。この様な事態を避ける為には,まずISSに微生物を持ち込まない事が望まれる。打ち上げ前に宇宙飛行士は約2週間ほど隔離され,ISSにドッキングする宇宙船も厳しい管理体制が敷かれる。しかしながら,人間は最大の微生物キャリアであり,ISSの微生物汚染は避けられない状況にある。よって,軌道上においても,定期的にモニタリングや掃除を行う事が対策となる。