宇宙航空環境医学 Vol. 50, No. 4, 94, 2013

認定医セミナー

「航空宇宙医学における検疫,防疫,感染症防護」

座長挨拶

緒方 克彦1,藤田 真敬2

1宇宙航空研究開発機構 総括医長
2防衛医科大学校 防衛医学研究センター 異常環境衛生研究部門

Quarantine, prevention of epidemics, and infectious disease prevention in aerospace medicine

Katsuhiko Ogata1, Masanori Fujita2

1Principal Medical Officer, Japan Aerospace Exploration Agency
2Division of Environmental Medicine, National Defense Medical College Research Institute, National Defense Medical College

航空医学の視点からは空港検疫や航空患者搬送時の防疫などが運航上の課題であるが,ISS環境においては地上からヒトが微生物を運ぶことになるゆえに,今後の超長期滞在ミッション計画とともに,ますます重要な課題となりつつある。
 更にアメリカでは,既に宇宙開発のかなりの部分をNASAから民間企業に任せる事で政府の方針は決定しており,既に“民間宇宙飛行士”については企業に所属するフライトサージャンが身体検査や健康管理の業務を実施しているし,NASAとFAAの協定により,医学認定についてもFAAの所掌とする事が決定している。一般人が同一のISS環境を訪れる事になれば,何層倍も感染症防御の重要さが高まるだろうし,医学基準ももっと厳しくなると予想される。
 切実な問題である感染症防御について,航空医学と宇宙医学の双方からそれぞれの業務や研究に携わる先生方をお呼びした。加來先生と藤田先生からは自衛隊の国際貢献や東日本震災後の感染症や,新型インフルエンザ流行時における大規模集団への疫学教育,予防接種,防疫,空港検疫等についての詳細な説明を,三木先生からISS船内環境の感染症防御システムと重要性の解説,槇村先生からは船内微生物,殊に真菌の実態を克明に解き明かして頂いた。最後に太田敏子先生から,これまでの宇宙微生物学の業績を俯瞰した上で今後の将来動向について伺う事ができ,認定医の先生方にも参考になったものと考える。