宇宙航空環境医学 Vol. 50, No. 4, 84, 2013

一般演題

32. 抗重力筋特性の保持におけるヒストンアセチル化の役割

河野 史倫1,大平 充宣2

1大阪大学 医学系研究科
2同志社大学

Role of histone acetylation in the characteristics of antigravity muscle

Fuminori Kawano1, Yoshinobu Ohira2

1Graduate School of Medicine, Osaka University
2Doshisha University

ヒストンのアセチル化は遺伝子転写に影響を与えるエピジェネティック機構である。ラットを用いて,抗重力筋(遅筋)であるヒラメ筋と速筋である足底筋において発現差の大きな遺伝子群のゲノム領域におけるアセチル化ヒストンの分布を解析した結果,速筋で多く転写されている遺伝子座にはアセチル化が多く認められたが,遅筋遺伝子座にはこのような特徴がないことが分かった。坐骨神経切断後28日間でヒラメ筋中のヒストンアセチル化は劇的に亢進し,遅筋および速筋特異的な遺伝子座のヒストンアセチル化パターンも顕著に乱れた。更に,7日間のバルプロ酸腹腔内投与により強制的にアセチル化を誘導した場合,ヒラメ筋では速筋化,足底筋では遅筋化が誘発された。以上の結果から,筋タイプ特異的な転写制御には正常なヒストンアセチル化パターンが必須であり,これらの維持には神経支配が重要な役割を果たすことが示唆された。