宇宙航空環境医学 Vol. 50, No. 4, 2013

一般演題

14. ラットエネルギー代謝に及ぼす平常給餌および絶食時コーヒー飲用の影響

鈴木 政登1,須藤 正道2

1東京慈恵会医科大学
2東京慈恵会医科大学 宇宙航空医学

Effects of coffee intake during the postprandial and fasting states on energy metabolism in OLETF rats

Masato Suzuki1, Masamichi Sudoh2

1The Jikei University School of Medicine
2Division of Aerospace Medicine, The Jikei University School of Medicine

【目的】 コーヒー含有カフェインにはエネルギー代謝亢進作用があり,肥満·糖尿病予防およびインスリン抵抗性改善など多くの代謝改善効果が報告されている。しかし,コーヒーを飲用する場合,食後と空腹時のいずれの効果が高いかは明らかではない。
 そこで,雄性ウイスターラットを用い,平常給餌時および1夜絶食後にレギュラーコーヒー(RC,カフェイン含量194 mg/250 mL,クロロゲン酸26.4 mg/250 mL)またはデカフェコーヒー(DC,カフェイン27 mg/250 mL,クロロゲン酸20.1 mg/250 mL)を経口投与し6時間に亘って酸素摂取量(VO2),二酸化炭素排泄量(VCO2)および呼吸商(RQ)を測定した。
 【方法】 10〜12週齡の雄性ウイスターラット8匹(体重263.8±8.6 g (±SE))を対象に,60 kgのヒトがRC 2杯(500 mL)飲用した場合を想定し,其々RC,DCおよび水(W)を経口投与し,小動物用エネルギー代謝測定装置(ARCO-2000)を用い,VO2,VCO2およびRQを連続測定した。絶食実験は前日18時に餌を撤去し,午前9時にRC,DCおよびWを順序無作為に投与し,投与後6時間に亘って観察した。平常給餌実験も同様プロトコールで行い,2〜3日間の間隔をおいてRC,DCおよびW投与実験を繰り返した。
 【結果と考察】 前日の18:00から翌朝8:30までの14.5時間の累積VO2は,平常給餌時の12.0±0.15 ℓに比較し,絶食時では約17%低値であった。平常給餌時の対照水経口投与後の10:00から15:00までの5時間の累積VO2(W)に比較し,DCでは9.3%,RCでは18.9%高値であった。DC,RC間にも8.6%の有意な差がみられた。一方,絶食時にW,DCおよびRCを経口投与した後5時間の累積VO2は,其々2.8±0.04,2.9±0.04,3.0±0.07 ℓであり3群間に有意差はみられなかった。前日18:00から実験終了までの19.5時間の累積VO2に対するW,DCおよびRC経口投与後5時間の累積VO2の比率は,其々平常給餌時22.0〜23.5%,絶食時21.8〜23.0%であり,平常給餌,絶食時,さらにはW,DCおよびRC投与間にも有意差は認められなかった。
 このことは,給餌によってエネルギー摂取量が多くなると,カフェインに誘発されるエネルギー代謝の亢進も多くなるが,絶食によってエネルギー摂取が阻害された場合,カフェインによる代謝亢進は僅少化することを示している。
 以上の結果から,正常なエネルギー代謝能を有するウイスターラットでは,食事によってエネルギー摂取量が多くなった場合にはコーヒー飲用による代謝量の亢進も多くなるが,絶食の場合には代謝亢進量は少なくなることが示唆される。