宇宙航空環境医学 Vol. 50, No. 4, 2013

一般演題

13. 一過性の朝食摂取が直腸温,心拍数,心臓自律神経活動の概日リズムに及ぼす影響

野瀬 由佳1,山口 英峰2,西村 一樹3,和田 拓真4,小野寺 昇5

1安田女子大学 家政学部
2吉備国際大学 社会科学部
3広島工業大学 環境学部
4川崎医療福祉大学大学院 医療技術学研究科
5川崎医療福祉大学 医療技術学部

Effects of eating breakfast on circadian rhythms of rectal temperature, heart rate and the cardiac autonomic nervous system

Yuka Nose1, Hidetaka Yamaguchi2, Kazuki Nishimura3, Takuma Wada4, Sho Onodera5

1Department of Nutritional Sciences, Yasuda Women's University
2Department of Sports Social Management, Kibi International University
3Department of Global Environment Studies, Hiroshima Institute of Technology
4Graduation School of Health and Sports Science, Kawasaki University of Medical Welfare
5Department of Health and Sports Science, Kawasaki University of Medical Welfare

【緒言】 食事は,概日リズムの同調因子の1つである。本研究は,一過性の朝食摂取が直腸温,心拍数,心臓副交感神経活動の概日リズムに及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
 【方法】 対象者は,成人男性7名(21±1歳,身長170.3±3.9 cm,64.4±6.5 kg)とした。対象者は,朝食を欠食する条件(Skipping condition:S condition)と朝食を摂取する条件(Breakfast condition:B condition)の2条件の測定を行った。測定前日の21時以降から測定室で過ごし23時に就寝した。対象者は,測定日の7時に起床し,22時まで座位安静とした。歩数を500歩以内に制限した。S conditionの朝食時間は,8時30分とした。昼食及び夕食は,両条件とも同時刻に同一の食事とした。対象者は,朝食を15分間,昼食と夕食を20分間で摂取した。測定前日及び測定日の飲料は常温の麦茶(カフェイン0)とした。測定室内の温度は24.0°Cに設定した。直腸温,心拍数,心臓副交感神経活動は,起床直後及び8時から22時まで2時間毎に仰臥位で測定を行った。心臓副交感神経系活動は,高周波帯域(0.15-0.4 Hz)のパワーの積分値(HF)を算出し,自然対数変換したlnHFを指標とした。対象者の朝食摂取習慣の有無は,口頭で確認した。
 【結果及び考察】 直腸温及びlnHFは,S conditionとB conditionの間に有意な差がみられなかった。本研究の結果から,一過性の朝食摂取が,直腸温及びlnHFの概日リズムに及ぼす影響は顕著にみられなかった。心拍数は,夜間及び早朝に低く,夕方に高値を示すことが報告されている。B conditionの心拍数は,起床直後と比較して10時,14時,16時,20時に高値を示した(p<0.05)。一方,S conditionは,7時と比較して有意差な差がみられなかった。食事を摂取すると消化管への血流量増加に伴い心拍出量が増大し,心拍数は増加する。しかしながら,朝食を欠食すると昼食後の心拍数の増加も減少し,概日リズムの位相振幅が減少する可能性が考えられた。対象者7名中,毎日朝食を摂取する対象者(朝食摂取群)が3名,週5日以上朝食を欠食する対象者(朝食欠食群)が4名であった。先行研究から,朝食を摂取すると体温が上昇することが報告されている。朝食欠食群のS conditionとB conditionの直腸温の差は,朝食摂取群に比較し小さい傾向にあった。朝食欠食習慣者は,一過性に朝食を摂取しても体温に及ぼす影響が小さいと考えられた。先行研究から,午前中の心臓副交感神経活動は,朝食を摂取すると低下し,朝食を欠食すると高い値で推移することが報告される。朝食欠食群は,先行研究と同様の傾向を示した。一方,朝食摂取群の午前中のlnHFは起床直後と比較し低下傾向を示した。胃など消化器官の酵素活性やホルモン分泌は,習慣的な摂食予定時刻に同調して起こる。lnHFの概日リズムも,朝食摂取習慣の有無に影響を受ける可能性が示唆された。
 【まとめ】 一過性の朝食摂取は,心拍数の概日リズムの位相振幅を増大させると考えられた。加えて,朝食摂取習慣の獲得は,lnHFの概日リズム形成に影響する可能性が示唆された。