宇宙航空環境医学 Vol. 50, No. 4, 2013

一般演題

12. 舌下温の概日リズムに及ぼす睡眠習慣の影響

西村 一樹1,山口 英峰2,吉岡 哲3,野瀬 由佳4,小野寺 昇5

1広島工業大学
2吉備国際大学
3香川大学
4安田女子大学
5川崎医療福祉大学

Effects of the sleep habituation on circadian variation

Kazuki Nishimura1, Hidetaka Yamaguchi2, Akira Yoshioka3, Yuka Nose4, Sho Onodera5

1Hiroshima Institute of Technology
2Kibi International University
3Kagawa University
4Yasuda Women's University
5Kawasaki University of Medical Welfare

ヒトは,約1日を1周期とする概日リズムを有する。概日リズムは,時差ボケに代表される短期的な要因および生活習慣の乱れなどの長期的な要因によって乱れが生じる。個人の概日リズム把握は,健康管理のために重要なことである。我々は若年者を対象に覚醒中の舌下温の日内変動を客観的かつ定量的に評価し,朝食摂取習慣および運動習慣がない者の体温のピーク値が出現する時刻が遅延することを報告した。朝食摂取習慣および運動習慣がない者は,起床時刻の遅延および起床時刻のバラつきが大きいなどの睡眠習慣の悪化も同時に観察された。これらのことから,睡眠習慣と舌下温の日内変動特性に関連性があるものと考える。本研究は,概日リズムに及ぼす睡眠習慣の影響を明らかにした。対象者は,若年者320名(平均年齢20歳)とした。対象者には,インフォームドコンセントを実施した。測定項目は,舌下温および起床·就寝時刻調査とした。舌下温は,電子体温計(オムロン社;MC-672L)を用い,起床後から就寝まで2時間毎に1週間測定した。対象者には普段通りの日常生活を送ること,舌下温の測定は座位姿勢で行うことを指示した。得られた測定値から最小二乗法を用いて近似式(二次回帰曲線)を求めた。得られた近似式から舌下温の日内変動特性(舌下温の最高値,最高値の出現時刻,位相時間など)を評価した。起床·就寝時刻および睡眠時間は,1週間の平均値を用いた。また,一週間の起床時刻,就寝時刻の対象者毎の変動係数を求めた。対象者の舌下温の日内変動特性は,起床時舌下温; 36.07±0.41(°C),舌下温の最高値;36.68±0.34(°C),最高値の出現時刻;17.6±2.0(時)および位相時間;9.4±2.0(時)であった。対象者の睡眠習慣は,起床時刻;8.2±1.1 (時),就寝時刻;24.8±1.2(時),睡眠時間;7.5±1.3(時)および起床時刻の変動係数;15.1±6.7(%)であった。起床時刻と最高値出現時刻との間に有意な正の相関関係を確認した(r=0.361,F=36.09)。また,就寝時刻と最高値出現時刻との間にも有意な正の相関関係が観察された(r=0.361,F=10.25)。これらのことは,起床時刻および就寝時刻の遅延が舌下温の日内変動の位相を後退させる要因であることを示す。起床時刻変動係数と最高値出現時刻との間に有意な正の相関関係を確認した(r=0.248,F=13.63)。このことは,一週間内の起床時刻のバラつきが日内変動の位相を後退させる可能性を示唆する。起床時刻と起床時刻変動係数との間に有意な正の相関関係が観察された(r=0.232,F=11.86)。本研究の知見から,海外旅行などの時差ぼけ(短期的要因)の対策として,現地時刻に沿った起床時刻の設定が重要であるものと考える。また,生活習慣の乱れ等による長期的な要因の対策として,起床時刻および就寝時刻の適正化および起床時刻を一定にするなどの生活習慣指導の重要性が考えられる。以上のことから,舌下温の日内変動特性(最高値が出現する時刻)は,睡眠習慣(起床時刻,就寝時刻,起床時刻の変動係数)と関連することが明らかになった。