宇宙航空環境医学 Vol. 50, No. 4, 2013

一般演題

2. 船内被服の毛羽減少加工

相羽 達弥1,佐藤 勝1,福多 健二2,緒方 克彦1

1宇宙航空研究開発機構 宇宙飛行士運用技術部
2つくば繊維技研

Dust reduction of the clothing in the International Space Station

Tatsuya Aiba1, Masaru Sato1, Kenji Fukuta2, Katsuhiko Ogata1

1Flight Crew Operations and Technology Dept., Japan Aerospace Exploration Agency
2Tsukuba Textile Engineering

国際宇宙ステーション(以下,ISS)内におけるダストは実験に不具合を起こす原因となるだけでなく,気道症状を引き起こす可能性があり,飛行士の健康に悪影響を及ぼす。また,ISS内ではダストによるファン等の騒音が指摘され,宇宙飛行士の聴力保護,コミュニケーションの質というヒューマンファクターの観点でも重要な課題である。
 船内に浮遊するダストの多くは宇宙飛行士が日常着用する船内被服の繊維であることがスペースシャトルでの測定から確認されている。我々は,船内被服の繊維由来のダストに対して,毛焼き加工およびシャリング加工,その前後の水洗処理に着目し,ISS搭載実績のある船内被服の完成品に適用可能な毛羽減少加工技術について検討している。
 今回,われわれは加工本機での加工条件を検討することを目的に,自作の小型毛焼き装置を用いた加工試験および評価をおこなった。船内被服として利用される綿100%の鹿の子柄のポロシャツを試料とし,火炎温度855,1,003,1,162,1,200°Cの4条件,火炎距離30,50,70 mmの3条件,加工速度30,40,50,60 m/minの4条件にてそれぞれ毛焼き加工を施した。さらに,未加工の試料に対して水洗処理を施し,全加工過程におけるその必要性を検討した。評価は,一般財団法人日本繊維製品品質技術センター(Japan Textile Products Quality and Technology Center;QTEC)のセロテープ法に準拠し,試料シャツ表面の毛羽を採取し,毛羽を画像解析ソフト(Image-Pro,日本ローパー)を用いて,解析対象範囲の毛羽総長を計測し,毛焼き加工面の毛羽立ち,焦げによる着色の有無を確認した。
 綿100%の鹿の子柄のポロシャツに対して毛焼き加工を施すことによって,未加工布に対して毛羽総長が53〜34%まで大きく減少した(P<0.05)。火炎温度,火炎距離,加工速度の各条件間において統計的な有意差はなかったのもの,火炎温度では1,003,1,162°C,火炎距離では70 mm,加工速度では40 m/minが毛羽総長が減少し,毛焼き加工面の毛羽立ち,焦げによる着色もわずかであった。水洗処理は,未加工布と有意差は見られず,水洗回数を2回,3回と複数回行っても大きな変化は認められなかった。
 船内被服として利用される綿100%の鹿の子柄のポロシャツに対し,小型毛焼き装置を用いた毛焼き加工および水洗処理を施し,その加工により毛羽減少について検討した。その結果,毛焼き加工により毛羽が減少することが確認され,加工本機における毛焼き加工において詳細に検討すべき加工条件範囲を示した。加工過程における洗濯は毛羽を減少させるほどの効果は見込めず,従来通り,ISS搭載前の洗濯処理のみで十分である可能性が示された。