宇宙航空環境医学 Vol. 50, No. 4, 2013

一般演題

1. 新しい宇宙船外活動用冷却下着の開発と検証

田中 邦彦,間野 忠明

岐阜医療科学大学 保健科学部 放射線技術学科

Development and evaluation of a new cooling garment for extravehicular activity in space

Kunihiko Tanaka, Tadaaki Mano

Department of Radiological Technology, Gifu University of Medical Science

現在米国で使用されている船外活動用宇宙服(以下,宇宙服)は,活動による体温上昇を抑制するため最内層に身体を冷却する液体冷却式通気服(Liquid Cooling and Ventilation Garment, LCVG)を着用する。これは身体にフィットするウェアに冷却水を灌流するチューブを編み込み,さらに酸素灌流用のチューブを縫着したものである。しかし,ウェアのほぼ全面を塩化ビニル製チューブで覆っているため汗が乾燥せず不快である。したがって飛行士はさらに内層に肌着を身に着ける必要がある。今回我々は冷却水灌流に加えて意図的にチューブからウェアに水を漏出させ,酸素灌流によってこれが乾燥する際に気化熱を奪うことで冷却と皮膚乾燥を同時に行える「蒸散下着」を考案し,その試作と検証を行った。
 健康被験者8名について冷却を行わないControl,背面に冷却水灌流チューブを編み込んだ模擬LCVG,および背面に冷却水灌流·漏出チューブを縫着した蒸散下着着用時の3条件で実験を行った。安静5分ののち自転車エルゴメーターで30 W,60 W,90 W,120 Wの運動を各3分行った際の背部皮膚温と湿度を計測した。Controlでは運動強度が上がるにしたがって皮膚温も上昇したが,模擬LCVGでは運動および灌流直後から直線的に皮膚温が下降し続けた。蒸散下着着用時には,模擬LCVGに比較して灌流面積が小さいため運動および灌流開始直後の皮膚温は運動開始前と有意な変化を認めなかったが漏出面積の拡大ならびにその蒸散によって90 W,120 W負荷時には有意に低下した。またこの低下は模擬LCVGよりも有意に大きかった。衣服内湿度は模擬LCVGが他の2条件よりも有意に高かった。
 今回の結果から蒸散下着は衣服内の湿度を上げることなく,局所の皮膚に対して高い冷却効果を得られることがわかった。しかし皮膚のみの冷却は表在動脈を収縮させることで体温の放出を妨げることにもなりかねない。今後は冷却水漏出速度の調節機構あるいは体感温度に合わせて任意に漏出,蒸散を促進させる機能等の付与が必要かと考えられる。