宇宙航空環境医学 Vol. 50, No. 1, 3-8, 2013

原著

急速輸液による脱水からの回復期における脳循環調節応答の変化

小川洋二郎,青木 健,柳田 亮,大屋 直子,岩崎 賢一

日本大学医学部社会医学系衛生学分野

The Changes of Recovery from Dehydration by Rapid Infusion on Cerebral Autoregulation

Yojiro Ogawa, Ken Aoki, Ryo Yanagida, Naoko Oya, Ken-ichi Iwasaki

Division of Hygiene, Department of Social Medicine, Nihon University of Medicine

ABSTRACT
 Our previous study showed that mild central hypovolemia resulting from furosemide administration improves dynamic cerebral autoregulation compared with lower body negative pressure. Since administration of furosemide induces a reduction in plasma volume, the intravascular dehydration may be a key factor to improve dynamic cerebral autoregulation. To confirm whether recovery from dehydration by infusion of normal saline is accompanied by restoration of the improved dynamic cerebral autoregulation with furosemide administration, we investigated dynamic cerebral autoregulation after administration of furosemide followed by rapid infusion of normal saline.
 Eleven healthy male subjects received furosemide 0.4 mg/kg followed by rapid infusion of normal saline (40 ml/min) until recovery from furosemide-induced dehydration. Hematocrit (Hct) and hemoglobin concentration (Hb) was measured to confirm dehydration. Dynamic cerebral autoregulation was assessed by spectral and transfer function analysis between beat-to-beat mean arterial pressure (MAP) and cerebral blood flow velocity (CBFV).
 Hct and Hb increased significantly approximately 1h after furosemide administration (Hct, +3%;Hb, +9%), respectively. The estimated percentage change in plasma volume was −13.7%. Steady-state MAP increased significantly, but CBFV did not change. Then, transfer function gain (the index of dynamic cerebral autoregulation) decreased significantly (23%), suggesting improved dynamic cerebral autoregulation. After infusion of normal saline (approximately 1,300 ml by a rate of 40 ml/min), Hct and Hb returned to the baseline level. Simultaneously, transfer function gain also returned to baseline level.
 The present results suggest that recovery from furosemide-induced dehydration by rapid infusion of normal saline is accompanied by restoration of the improved dynamic cerebral autoregulation. That is, dehydration would be a main factor to improve dynamic cerebral autoregulation.

(Received:22 February, 2013 Accepted:8 April, 2013)

Key words:central hypovolemia, furosemide, hemoconcentration, cerebral blood flow velocity, transfer function analysis

I. はじめに
 宇宙飛行や宇宙滞在を通じて,心臓周囲に分布する血液の量,つまりは中心循環の血液量は劇的に変化し,帰還時には減少する2,3)。その際,血液の性状として,血漿量減少が主な場合と,血球成分の減少を伴う場合がある20)。また一方,Neurolab-Mission(STS-90)において,2週間の宇宙飛行中および帰還直後,血圧の変化を緩衝し,脳への血流を一定に保つ機構:脳循環調節応答は向上されることが報告され10),その機序解明が新たな課題となっている。
 これまでに我々の研究グループは,血漿成分の減少を導く利尿薬投与や血球成分の減少も含めた全血液量の減少を模擬する下半身陰圧負荷装置を用いて,急性に中心循環の血液量を宇宙飛行後と同程度に減少させた際の脳循環調節応答を評価した16)。その結果,利尿薬投与による中心循環の血液量減少に限り,脳循環調節応答は向上することを報告した。利尿薬投与では,下半身陰圧負荷とは異なり,血漿量減少による血液濃縮が生じている。つまり,この“血管内脱水状態”が脳循環調節応答の向上に関与している可能性がある15,16)
 そこで本研究では,利尿薬投与による脱水後に,急速な輸液負荷を行い,脱水を即座に回復させることで,脱水時に見られた脳循環調節応答の変化が元に戻ると仮説し,検討を行った。

II. 方法
 本研究は,日本大学医学部倫理委員会の承認(承認番号22-14)を得て行われた。実験に際し,被験者には事前に本研究内容を実験説明書を用いて説明し,文書にて同意を得た。健康成人男性11名(平均±標準偏差:24±2歳,172±2 cm,64±5 kg)を対象に,利尿薬: フロセミド 0.4 mg/kg投与と生理食塩水の急速輸液(40 ml/min)を行った。被験者には実験24時間前よりカフェインおよびアルコール摂取,激しい運動を,2時間前より食事を禁じた。
 23-25℃に調節した実験室にて仰臥位安静の被験者に,心電図,パルスオキシメーター,カプノメーター(Life Scope BSM-5132,日本光電,東京,日本)と非観血的連続血圧計(JENTOW7700,日本コーリン,愛知,日本)を装着した。この血圧計は,観血的動脈圧と同等の精度を示すことが報告されている11)。中大脳動脈の血流速度の連続測定のため,経頭蓋ドップラー2 MHzプローベ(WAKI, Atys Medical, Soucieu-eu-Jarrest, France)を右側頭部に自作の固定器を用いて装着した8)。中大脳動脈の血管径は,血圧や血中二酸化炭素濃度の変化など様々な刺激に対して比較的一定であり7,19),脳血流速度の変化と脳血流量の変化は相関すると報告されている。これら各種モニターにより測定した心電図,動脈圧波形,脳血流速度波形を計測・表示用ソフトウェア(Notocord-hem 3.3, Notocord, Paris, France)を使用して1 kHzのサンプリング周波数で,コンピューター上に記録した。利尿薬投与,採血ならびに輸液負荷のため,前腕皮静脈より20Gの留置針を用いて静脈路を確保した。
 30分以上の安静を取った後,採血を行い,6分間の安静時の測定値(Baseline)を記録した。その後,利尿薬: フロセミド 0.4 mg/kgを静脈内投与し,以下の条件(① 最低1回の排尿,② 最後の排尿から15分以上の仰臥位安静,③ ② の時点で切迫した尿意がない)が達成したことを確認した。その上で,採血により測定したヘマトクリット(Hct)及びヘモグロビン濃度(Hb)の増加から血液濃縮が生じていることを確認し,続く6分間を脱水時の測定値(Dehydration)とした。なお,脱水時のHctとHb値は,6分間の脱水時の測定値を記録した後にも採血を行い,前後で測定した2回の平均値として算出した。脱水の程度の確認のためには,安静時と脱水時のHctとHbの変化からDillの予測式を用いて失われた血漿量を算出した4)。次に,測定した排尿量および消失血漿量を考慮し,生理食塩水の急速輸液(40 ml/min)を行った。予定量の急速輸液後,採血を行い,Hct,Hb,Dillの予測式から血漿成分が安静時(Baseline)と同程度に回復したことを確認し,続く6分間を回復時の測定値(Recovery)とした。回復時のHctとHb値も,6分間の回復時の測定値を記録した後にも採血を行い,前後で測定した2回の平均値として算出した。その他,動脈血酸素飽和度,呼吸数,呼気終末二酸化炭素濃度は各6分間の測定中に1分毎に記録した。
 周波数解析および伝達関数解析による動的脳循環調節応答の評価のため,記録した動脈圧波形と脳血流速度波形から一心拍毎の平均血圧と平均脳血流速度を求め,線形補間を用いて0.5秒毎に再サンプリングし時系列波形に変換した9)。そして,変換した各時系列波形から三次近似曲線による平均値との差を求め,血圧変動量と脳血流変動量を算出した。血圧変動と脳血流変動の各周波数成分のシグナルの強さを表すスペクトルを高速フーリエ変換(fast Fourier transform)により得た。血圧変動と脳血流変動との関係を伝達関数解析(Transfer Function Analysis)にて解析し,脳循環調節応答の評価指標であるCoherence(関連性)とTransfer Function Gain(伝達増幅度)を求めた。Coherenceは血圧と脳血流速度との相関性や依存度の評価指標であり,Transfer Function Gainは血圧(mmHg)から脳血流速度(cm/s)への伝達の増幅度 (cm/s/mmHg)を示す。各指標の解釈としては,それらの値が低いほど血圧変動に対し脳血流変動の依存度が低く,脳血流の変動を緩衝することを表すため,脳循環調節応答の向上を示している。以上の解析において,先行研究に従い21),調節機能の特性の違いから周波数帯を超低周波数帯(very-low frequency:VLF, 0.03〜0.07 Hz),低周波数帯(low frequency:LF, 0.07〜0.2 Hz),高周波数帯(high frequency:HF, 0.2〜0.3 Hz)に分けた。この周波数帯の違いにより脳血流を調節するメカニズムが異なることが報告されている6,21,22)
 統計学的検討には,一元配置の反復測定分散分析(因子:時間)を用い,Post-hoc testとしてStudent-Newman-Keuls testを用いた。P<0.05を統計学的有意とし,全ての結果を平均±標準偏差で表した。

III. 結果
 被験者はフロセミド投与から平均61±16分後に脱水時(Dehydration)の測定を行い,その間に平均1,275±305 ml排尿していた。一方,急速輸液による回復時(Recovery)の測定までに平均1,282±206 mlの生理食塩水を輸液した。
 循環動態と呼吸状態の結果をTable 1に示した。フロセミド投与後,HctおよびHbは有意に増加(Fig. 1)し,−13.7±2.8%の血漿量減少を認めた。急速輸液後,HctおよびHbは共にBaselineと同程度に回復(Fig. 1)し,Baselineとの血漿量変化の予測値も0.5%±2.8%であった。平均血圧は,フロセミド投与後および急速輸液後,有意な増加を示したが,脳血流速度や心拍数は変化を示さなかった。また,動脈血酸素飽和度が急速輸液後わずかに増加した以外,呼吸数および呼気終末二酸化炭素濃度は変化を示さなかった。
 周波数・伝達関数解析による脳循環調節応答の評価指標の結果をTable 2に示した。低周波数帯のTransfer Function Gain(Gain-LF)は,フロセミド投与後に有意な低下を示したが,急速輸液による脱水回復後はBaselineと同程度になった(Fig. 1)。その他の各指標は有意な変化を示さなかった。

IV. 考察
 本研究において,利尿薬:フロセミド0.4 mg/kg投与は,Hbとして約9%の増加,Hctとして約3%の増加を示し,循環血漿量の約13%の減少という軽度な脱水を生じた。その際,脳循環調節応答の評価指標のひとつである低周波数帯のTransfer Function Gain (Gain-LF)は有意な低下を示し,これまでに我々の研究にて報告した脱水時の結果(脳循環調節応答の向上)と一致していた15,16)。次に,生理食塩水の急速輸液により脱水を回復させた際,脳循環調節応答の評価指標も安静時(Baseline)と同程度になった。つまり脱水が脳循環調節応答の変化に関与していることが本研究結果からより明確に示唆された。
 脳循環調節応答は,血圧の変化が平均動脈圧で約60〜150 mmHgの範囲内であれば,脳への血流を一定に保つ機構(Autoregulation Curve)である。この概念は一定時間内の平均値としての血圧と脳血流の関係に焦点を当てた考え方である。しかしながら,血圧変化の“速さ”に焦点を当てると,平均動脈圧の変化が上記の範囲内であっても,血圧変化が急速(数秒から十数秒)な場合は,脳血流も変化し,影響を受けることが解明されてきた1,6,21)。このため,従来からのAutoregulation Curveに代表される「静的」脳循環調節応答の概念に対し,急速な変化を考慮した「動的」脳循環調節応答の概念が導入された。
 我々の先行研究において,中心循環の血液量減少がこの「動的」脳循環調節応答に及ぼす影響を評価した16)。その結果,利尿薬投与もしくは下半身陰圧負荷装置を用いて同等の中心循環の血液量を減少させたにもかかわらず,動的脳循環調節応答への影響は異なり,血漿成分の減少を導く利尿薬投与に限り,動的脳循環調節応答は向上することを認めている。この報告は,単純な中心循環の血液量減少の影響ではなく,血液濃縮を伴う中心循環の血液量減少,つまり“脱水”が脳循環調節応答の向上に関与していることを示唆している。そのため,本研究ではこの脱水を生理食塩水の急速投与により回復させ,動的脳循環調節応答の変化が戻るかどうか検討した。その結果,脱水による動的脳循環調節応答の向上効果は,生理食塩水の急速投与により消失した。この脱水による脳循環調節応答の向上を導いた要因としては「血液濃縮」が関与している可能性がある。先行研究でも報告しているように16),軽度脱水時において脳血流量に変化がないことから,血液濃縮による酸素含有量の増加により脳への酸素供給量も増加していると考えられる。脳への酸素供給量増加が脳循環調節応答の変化に関与している可能性がある。また,血液濃縮による粘性増加のため脳血管でのずり応力(shear stress)が増加したことにより内皮細胞由来物質の放出が活性化されることで,脳循環調節応答が向上した可能性も考えられる。さらに,本研究で認められたTransfer Function Gain(Gain-LF)の低周波数帯は,脳循環調節メカニズムの筋原性機構が主に関与していると報告されているため18,21),ずり応力(shear stress)の増加が筋原性機構に影響を及ぼした可能性も否定できない。そして,これら脳への酸素含有量やずり応力の増加は,生理食塩水投与による血液希釈により軽減・消失するため,動的脳循環調節応答の向上効果も消失したと考えられる。しかし,本研究結果からは「血液濃縮」の直接的影響を明白にすることは出来なかった。この検討のためには,脱水後に輸血を行い,血液濃縮が生じたまま中心循環の血液量を回復させた際にでも,脳循環調節応答の向上効果が持続していることを示す必要があるが,倫理面の関係から断念せざるを得なかった。
 一方,区間平均値である平均血圧は,脱水時に上昇し,先行研究と同様な結果を示した16)。さらに,生理食塩水投与による脱水回復後も血圧上昇は持続していた。脱水データは,利尿薬投与約1時間後に測定しており,バソプレッシン系やレニン・アンギオテンシン系などの内分泌性の循環調節機構が働いたと推察される。特にレニン・アンギオテンシン系調節は強力な血圧上昇機構であることから,生理食塩水投与による脱水回復後も持続したと考えられる。
 本研究の限界として,経頭蓋ドップラー血流計による脳血流量評価は,測定する中大脳動脈の直径変化は極めて小さいという仮定の上に成り立っていることである。しかし,これまで様々な方法で中大脳動脈の血管径を測定した研究では,スパスムのような特殊な状態を除き,造影剤などの高浸透圧液投与や血中二酸化炭素濃度の変化によってもほとんど変化しないことが報告されている17)。さらに経頭蓋ドップラー血流計による中大脳動脈血流速度と脳全体の血流量変化は高い相関が示されており12,14),本研究結果への影響は少ないと考えられる。
 宇宙飛行・滞在からの地球帰還時に生じる起立耐性低下の発生率は,25〜83%と幅が広い2,5,13)。また,宇宙飛行士の中には,血漿量の低下が生じる飛行士と,血漿量と血球量の両方が低下した飛行士が存在していることが報告されている20)。微小重力環境への急性曝露と慢性曝露では生体への影響に相違があるが,慢性への適応上の変化以前に「単なる物理的影響としての血液性状」と起立耐性低下発生との関係は未だ不明である。しかし,本研究結果から,中心血液量低下時の血液濃縮の有無が動的脳循環調節応答と起立耐性低下発生に関与している事が示唆され,中心循環の血液量減少が同量な場合,血球成分も低下している状態の方が起立耐性低下の度合いが大きい可能性が考えられる。


Table 1. Steady-State Hemodynamics and Respiratory Conditions.
  Baseline Dehydration Recovery
Hct (%) 40±2 43±2 39±2#
Hb (g/dl) 13.4±0.8 14.7±0.8 13.4±0.9#
ΔPV (%) −13.7±2.8 0.5±2.8
MAP (mmHg) 71±5 83±8 80±8†
CBF velocity (cm/s) 65±12 68±13 70±12
HR (beats/min) 56±5 55±5 55±5
Resp-R (breath/min) 12±4 13±4 14±4
ETCO2 (mmHg) 41±5 41±6 41±5
SpO2 (%) 97.1±0.5 97.4±0.5 97.7±0.8†
Values are means±SD.
Hct, hematocrit; Hb, hemoglobin concentration; ΔPV, percentage change of plasma volume; MAP, mean arterial blood pressure; CBF velocity, cerebral blood flow velocity; HR, heart rate; Resp-R, respiratory rate; ETCO2, end-tidal carbon dioxide pressure; SpO2, arterial oxygen saturation; : P<0.05, statistically significant between Baseline and Dehydration; # : P<0.05, statistically significant between Dehydration and Recovery. † : P<0.05, statistically significant between Baseline and Recovery.


Fig. 1. Group-averaged changed in the blood property and low-frequency transfer function gain.
Hb, hemoglobin concentration; Hct, hematocrit; Gain-LF, low-frequency transfer function gain; white box, Baseline data; black box, Dehydration data after furosemide administration; gray box, Recovery data after infusion of normal saline.



Table 2. Spectral and Transfer Function Analysis of Arterial Blood Pressure and CBF velocity
  Baseline Dehydration Recovery
VLFMAP (mmHg2) 2.42±1.01 3.51±2.87 3.11±1.61
LFMAP (mmHg2) 1.42±1.12 1.87±0.94 1.66±2.79
HFMAP (mmHg2) 0.08±0.10 0.09±0.06 0.14±0.08
VLFCBF (cm2/s2) 2.24±1.15 3.59±2.52 3.25±1.75
LFCBF (cm2/s2) 1.94±2.47 1.43±1.15 1.76±2.88
HFCBF (cm2/s2) 0.14±0.14 0.12±0.05 0.15±0.15
Coh-VLF (unit) 0.43±0.11 0.37±0.08 0.47±0.13
Coh-LF (unit) 0.66±0.16 0.60±0.18 0.56±0.17
Coh-HF (unit) 0.53±0.17 0.52±0.20 0.49±0.23
Gain-VLF (cm/s/mmHg) 0.61±0.16 0.59±0.18 0.79±0.40
Gain-LF (cm/s/mmHg) 0.99±0.31 0.75±0.23* 0.92±0.30#
Gain-HF (cm/s/mmHg) 1.05±0.36 0.89±0.30 0.93±0.32
Values are means±SD.
CBF, cerebral blood flow; VLFMAP, very-low-frequency component of the mean arterial blood pressure variability; LFMAP, low-frequency component of the mean arterial blood pressure variability; HFMAP, high-frequency component of the mean arterial blood pressure variability; VLFCBF, very-low-frequency component of CBF velocity variability; LFCBF, low-frequency component of the CBF velocity variability; HFCBF, high-frequency component of the CBF velocity variability; Coh-VLF, coherence in the very-low-frequency range; Coh-LF, coherence in the low-frequency range; Coh-HF, coherence in the high-frequency range; Gain-VLF, transfer function gain in the very-low-frequency range; Gain-LF, transfer function gain in the low-frequency range; Gain-HF, transfer function gain in the high-frequency range; * : P<0.05, statistically significant between Baseline and Dehydration, # : P<0.05, statistically significant between Dehydration and Recovery.

V. まとめ
 本研究において,利尿薬投与による軽度の脱水は,先行研究と同様に動的脳循環調節応答の向上を導くことを確認した。さらに,生理食塩水の急速投与による脱水からの回復期には,動的脳循環調節応答の変化を元の状態へ戻すことから,脱水が動的脳循環調節応答の変化に関与していることがより明確に示唆された。

謝辞
 本研究を遂行するに当たり,ご協力頂きました,日本大学医学部麻酔科学系・加藤実准教授,鈴木孝浩准教授,並びに同大学脳神経学系・酒谷薫教授,五十嵐崇浩助教に深謝致します。
 本研究は,日本大学医学部創立50周年記念研究奨励金(共同研究)の助成を受けて行われた。

文 献

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