宇宙航空環境医学 Vol. 49, No. 4, 113, 2012

公開講演

公開講演会「オリンピックへの道と健康科学」開催にあたって

後藤 勝正

第58回日本宇宙航空環境医学会大会 大会会長
豊橋創造大学大学院 健康科学研究科

Some aspects of health sciences for a member of Olympic athletes

Katsumasa Goto

President of the 58th Annual Meeting of Japan Society for Aerospace and Environmental
Department of Physiology, Graduate School of Health Sciences, Toyohashi SOZO University

アスリートの憧れであるオリンピック選手。オリンピック選手になるためには,競技成績の向上が必要ですが,それにはまず自分の身体の健康管理が不可欠。言い換えれば,健康の象徴と捉えることもできます。一方,国際宇宙ステーション(ISS)に滞在する宇宙飛行士の身体には,骨格筋萎縮や循環血液量減少,骨萎縮などいわゆる老化や不健康の病態が出現します。つまり,オリンピック選手と宇宙飛行士は対極的な存在であると考えられます。宇宙環境以外にも,人類がこれまで築き上げてきた文明は我々人間に対して様々な恩恵をもたらすと同時に,多種多様な環境をもたらしています。例えば,身の回りに氾濫する高カロリー食品群です。高カロリー食品は人々の食欲を刺激し,交通機関の発達による運動不足と相まっていわゆる生活習慣病をもたらしています。しかし,オリンピック選手は健康でなければいけませんから,こうした環境下においても健康を維持増進していかなければなりません。
 本講演会では,ロンドンオリンピック陸上競技十種競技日本代表の右代啓祐氏をお迎えし,オリンピック選手になるための日頃の努力と身の回りの環境に対する考え方を聞くことで,健康に対する視点や健康の維持増進方法についての新たな視点を得たいと考えています。特に,小中高校生を中心とした次世代の担い手にとって,大いに参考になるものと期待しています。また,未来を担う若者を育ていらっしゃる保護者の皆様方をはじめ,健康·スポーツ,運動指導者などにも貴重な体験となるものと期待しています。