宇宙航空環境医学 Vol. 49, No. 4, 90, 2012

企画シンポジウム I

「宇宙実験(The mice drawer system : MDS)報告会」

3か月間の宇宙飛行がマウスの生体諸特性に及ぼす影響:mouse drawer system実験に参加して

大平 充宣

大阪大学大学院 医学系研究科

Effects of 3-month spaceflight on various characteristics of mice:Results from mouse drawer system projects

Yoshinobu Ohira

Graduate School of Medicine, Osaka University

【背景】 国際宇宙ステーション(ISS)の運用が始まるとともに,飛行士の長期滞在に拍車がかかっている。更には,月および火星への有人飛行も計画されており,長期間の宇宙滞在が生体に及ぼす影響の解明や宇宙空間への適応を防止するためのcountermeasuresの開発が望まれている。そこで,長期宇宙滞在がマウスの生体諸特性に及ぼす影響を追求するために,イタリア宇宙機関(ASI)が企画したmouse drawer system(MDS)プロジェクト(PI:Dr. Ranieri Cancedda, Univ. Genova, Italy)に参加し,各種臓器を分析する機会を得た。そこで,これらの分析結果を紹介し,考察を深めるために本シンポジウムを企画した。
 【方法】 打ち上げ時8週齢のオスC57BL/10Jマウス(wild typeおよびpleiotrophin-transgenicそれぞれ3匹ずつ)をスペースシャトル·ディスカバリー(STS-128)で打ち上げ,ISSの「きぼう」内で飼育した。残念ながら,アトランティス(STS-129)で生還したのは,wild type 1匹とtransgenic 2匹のみであったが,91日間の飛行後,着陸3時間以内にサンプリングした。その後,地上コントロール実験として,同種 · 同週齢等のマウスを使った3か月のMDS(床面:11.6×9.8 cm,高さ:8.4 cm)での飼育(ground control),通常のケージでの飼育(laboratory control),後肢懸垂および2-G負荷群も作成し,同様なサンプリングおよび分析を実施した。