宇宙航空環境医学 Vol. 49, No. 4, 72, 2012

一般演題

14.　ハイブリッドトレーニングシステムを用いたエルゴメータ運動の長期訓練効果

松瀬　博夫¹，志波　直人¹，名護　健¹，高野　吉郎²，山田　深³，大島　博³，田川　善彦⁴

¹久留米大学　リハビリテーション部
²帝京大学福岡　医療技術学部
³宇宙航空研究開発機構
⁴九州工業大学大学院　工学研究院

Training effect of cycling exercise combined with the hybrid training system

Hiroo Matsuse¹, Naoto Shiba¹, Takeshi Nago¹, Yoshio Takano², Shin Yamada³, Hiroshi Ohshima³, Yoshihiko Tagawa⁴

¹Division of Rehabilitation, Kurume University Hospital
²Department of Physical Therapy Faculty of Medical Technology, Teikyo University Fukuoka
³Japan Aerospace Exploration Agency
⁴Department of Mechanical and Control Engineering, Kyushu Institute of Technology

【はじめに】　ハイブリッドトレーニングシステム（HTS）は，拮抗筋の電気刺激筋収縮を主動筋の運動抵抗とする運動で，主動筋と拮抗筋が同時に訓練でき，微小重力下でも外力を用いずに運動抵抗を得ることができる。これまでに，健常者や高齢者において，関節の屈伸運動での筋力増強·筋肥大効果を報告してきた。宇宙空間では座位での膝の屈伸運動などは難しいため，下肢の運動方法の一つとして宇宙ステーションでも実際に用いられている自転車エルゴメータ運動（エルゴ）にHTSを組み合わせた方法を検討し，昨年本学会にてHTSを組み合わせることによって，エルゴに運動負荷を新たに加えることができることを報告した。
　【目的】　今回は，その新しい運動法の長期訓練効果の検証を行った。
　【方法】　健常男性16名をHTSありでのエルゴ群（HER）とHTSなしでのエルゴ群（ER）の2群に分け，エルゴを30分間，週3回，6週間実施した。運動強度は，最大酸素摂取量の40%とした。HERでは，ERと同様30分間駆動するが，HTSを2分刺激，1分休止を10回繰り返した。訓練前後に，膝関節筋力，大腿部筋断面積，最大酸素摂取量，嫌気性域値を計測した。
　【結果】　HERにて，膝伸展筋力が平均約40.6%増強，屈曲筋力が平均約47.0%増強，大腿四頭筋断面積が平均約9.6%増大，最大酸素摂取量が平均約8.7%増加，嫌気性域値が平均約24%増加した。ERでは，ハムストリングが約5.0%増大しただけであった。
　【考察】　エルゴにHTSを組み合わせることによって，抵抗運動効果だけではなく有酸素運動効果も得ることができるかもしれない。