宇宙航空環境医学 Vol. 49, No. 4, 63, 2012

一般演題

5.　重力レベルがマウス頸筋におけるタンパク質発現に及ぼす影響

大平　友宇¹，大平　宇志²，河野　史倫³，芝口　翼⁴，岡部　洋興⁵，大野　善隆¹，須藤　正道⁶，後藤　勝正¹，Ranieri Cancedda⁷，大平　充宣^3,4

¹豊橋創造大学大学院　健康科学研究科
²宇宙航空研究開発機構　宇宙医学生物学研究室
³大阪大学大学院　医学系研究科
⁴大阪大学大学院　生命機能研究科
⁵国士舘大学　文学部
⁶東京慈恵会医科大学
⁷DOBIG, University of Genova, Genova, Italy

Effects of gravity levels on protein expression in mouse neck muscles

Tomotaka Ohira¹, Takashi Ohira², Fuminori Kawano³, Tsubasa Shibaguchi⁴, Hirooki Okabe⁵, Yoshitaka Ohno¹, Masamichi Sudoh⁶, Katsumasa Goto¹, Ranieri Cancedda⁷, Yoshinobu Ohira^3,4

¹Graduate School of Health Sciences, Toyohashi SOZO University
²Space Biomedical Research Office, Japan Aerospace Exploration Agency
³Graduate School of Medicine, Osaka University
⁴Graduate School of Frontier Biosciences, OsakaUniversity
⁵Faculty of Letters, Kokushikan University
⁶The Jikei University School of Medicine
⁷DOBIG, University of Genova, Genova, Italy

【背景】　マウス頸筋は，主として速筋線維で構成されているものの，頭の位置を維持する抗重力活動に貢献している。ところが，重力レベルに応じたどのような可塑性を有するのか不明である。
　【目的】　長期間の微小重力環境暴露や（抗重力活動を増大すると思われる）head-down tilt姿勢および2-G環境への暴露が，マウス頸筋のタンパク質発現に如何なる影響を及ぼすのか追求する目的で本研究を実施した。
　【方法】　生きたまま生還したのは1匹のみであったが，オスwild type C57BL/10Jマウス3匹を3カ月間国際宇宙ステーションで飼育した。同種マウスを，同飼育装置（mouse drawer system，床面:11.6×9.8，高さ:8.4 cm）または通常のケージで同期間飼育した地上コントロール実験も実施した。さらに，後肢懸垂および2-G負荷実験も実施した。CO₂吸入により安楽死させたこれらのマウスより，両側の頸筋を採取し，液体窒素で瞬間凍結した。その後，右脳を粉末化し，その一部を使用してマイクロアレイ解析およびiTRAQ® 法を用いたプロテオミクス解析を行った。
　【結果および考察】　解析した4,000種の遺伝子のうち，宇宙滞在により発現が亢進（2倍以上）されたものが125種，抑制（1/2以下）されたものが117種確認された。一方，タンパク質発現は，宇宙飛行により28種が亢進，9種が抑制された。これらのタンパク質の機能をデータベースを基に調べた結果，免疫反応や酵素活性，ミトコンドリア代謝，タンパク輸送等に関与していることが明らかとなった。
　【謝辞】　本研究は，日本学術振興会·科学研究費補助金 （基盤研究S, 19100009）によって実施された。