宇宙航空環境医学 Vol. 49, No. 4, 60, 2012

一般演題

2.　模擬微小重力曝露の血圧変動と交感神経活動への影響

田中　邦彦¹，岩瀬　敏²，西村　直記²，安部　力³，岩田　ちひろ³，森田　啓之³，菅屋　潤壹²，間野　忠明¹

¹岐阜医療科学大学　保健科学部　放射線技術学科
²愛知医科大学　生理学第2講座
³岐阜大学大学院　医学系研究科　神経統御学講座　生理学分野

Effects of simulated microgravity for arterial pressure variability

Kunihiko Tanaka¹, Satoshi Iwase², Naoki Nishimura², Chikara Abe³, Chihiro Iwata³, Hironobu Morita³,Junichi Sugenoya², Tadaaki Mano¹

¹Department of Radiotechnology, Gifu University of Medical Science
²Department of Physiology, Aichi Medical University
³Department of Physiology, Graduate School of Medicine, Gifu University

模擬微小重力曝露前後における交感神経活動と動脈圧変動の変化とその関係を調べた。被検者は19〜30歳の健康男性10名で，模擬微小重力曝露として20日間，−6°ベッドレストを行った。ベッドレスト前後で動脈血圧，腓骨神経からの筋交感神経活動を連続的に記録しつつ，−6°，0°，30°および60°に15分ごとに姿勢を変化させた。姿勢変化前の安定した256秒間における収縮期血圧の自己回帰パワースペクトルを算出し，0.04〜0.15 Hzのパワーを積分した。それぞれのパワーと同時間における神経活動の頻度との相関を求めた。ベッドレスト前後で収縮期，拡張期血圧，平均血圧に有意差を認めなかったが，ベッドレスト後は前に比較して脈拍数および神経活動の有意な増加を認めた。収縮期血圧変動は神経活動と高い相関を認めた。以上の結果から姿勢変化時の収縮期血圧変動は交感神経活動と相関すること，宇宙飛行前後における交感神経活動の推定に有用であると考えられた。