1.　麻酔下ラットでの90° Head-up tilt時の体血圧，総頸動脈血流量，心拍数の変化と圧反射 | Cardiovascular changes and baroreflex after 90° head-up tilt in anesthetized rats

一般演題

1.　麻酔下ラットでの90° Head-up tilt時の体血圧，総頸動脈血流量，心拍数の変化と圧反射

西村　宗修，山﨑　将生，伊藤　康宏，野村　裕子

藤田保健衛生大学大学院　保健学研究科

Cardiovascular changes and baroreflex after 90° head-up tilt in anesthetized rats

Hironobu Nishimura, Masao Yamasaki, Yasuhiro Ito, Hiroko Nomura

Graduate School of Health Sciences, Fujita Health University

我々は麻酔下ラットを仰臥位から立ち上がり姿勢へ体位変換（90° head-up tilt, HUT）した時の，体血圧（BP)，総頸動脈血流量（BF）および心拍数（HR）の変化とHUT時の圧受容器反射の役割を追求している。本研究では圧受容器の入力を絶って（sinoaortic denervation, SAD)，比較的長くHUT状態を保った時のそれらの値の経時的変化をSAD前後で調べ，体位変換時の圧受容器反射の関与について検討した。
　動物の取扱いは藤田保健衛生大学動物実験規定に従い承認を得て行った。成熟SDラット（♂, 420～730 g）11匹をurethane（1～1.2 g/kg, ip）で麻酔し，気管チューブの挿入，BPとBF測定のための左右総頸動脈と交感·副交感神経束の露出と分離の頸部手術を行った。SADは大動脈神経の切断と頸動脈洞神経の挫滅により行った。左総頸動脈には血流計プローブ（2 mm;Transonic, USA）を装着し，血圧測定用カテーテルを右総頸動脈から鎖骨下分岐部近くまで挿入し心臓位固定の圧トランスデューサに接続した。胸部皮下へはHRを求めるための心電図電極をCM5誘導相当位置に固定した。BF計測には超音波血流計（T206, Transonic, USA）を用い，その出力と心電図電極ならびに圧トランスデューサをパーソナルコンピュータ（PC）に連動したアナログデジタル解析装置（MP-36, Biopack System, USA）に接続しBP，BFとHRを計測してPCにデータを保存した。HUTは独自の保定箱（発泡スチロール製）に動物を仰臥位で固定し，仰臥位から90° HUTを速やかに行い15分および30分間以上その状態を保った。
　BPはHUT直後に低下し（Before SAD;4.4±1.4 sec, After SAD;4.5±1.5 sec, mean±SD, n=7)，その変化はSAD処置後で幾分大きく，HUT前値に対する%変化率はSAD前で13.9±4.1%，SAD後18.8±6.0%，BFの変化率はSAD前26.7±10.1%，SAD後32.9±15.4%であった。その後，増加に転じるがSAD処置群では最大値への到達時間が短縮し増加も小さかった（Before SAD;86.7±12.7 mmHg at 47.5±11.5 sec after onset of HUT, After SAD;78.5±18.8 mmHg at 22.3±9.1 sec）。HRはSAD前でHUT 15分（n=7)，30分（n=4）で有意な増加を示すが，SAD後ではその増加は見られず，HUT 30分で410±28.0 bpmであり，HUT前409±32.2 bpmとの間に有意な差はなかった（paired-t test, p<0.05, n=6）。
　以上より，HUT直後に静水圧勾配が瞬時に生じて体血圧は低下し，頭側への血流量は減少する。その後，増加に転じるが圧受容器の入力が無いと早期に圧の低下が認められ十分に血圧を維持出来ない。また，入力がある時にはHUT中の静脈還流量減少に伴う1回拍出量減少に見合ったHRの増加があると考えられるが，その増加はSAD処置後では見られない。従って，90° HUT後の循環調節では脳供血を保つように圧受容器反射が働き，特に，麻酔下では重要な働きを担う。