宇宙航空環境医学 Vol. 48, No. 4, 114, 2011

若手の会シンポジウム

2. 水棲生物を用いた研究の位置づけ

大平 宇志

大阪大学 生命機能研究科

Future studies using medaka in space medicine

Takashi Ohira

Graduate School of Frontier Biosciences, Osaka University

メダカは,早い世代交代や容易な遺伝子操作,胚発生過程や体内の生体反応,蛍光標識したタンパク質および細胞を非侵襲的に観察できる等の利点から広く実験動物として用いられている。しかし,小型水棲生物を用いた実験では,宇宙環境における脳波や心·筋電図等測定は技術的に困難である。以上のような点をふまえ,宇宙滞在中や宇宙からの帰還後の宇宙飛行士の健康維持·管理を可能とすることが目的とされる「宇宙医学」の研究において,我々は水棲生物を用いた研究をどのように位置づけるべきだろうか。また,現在の課題として,今後,水棲生物を用いた実現可能な研究計画を立案する他に,ヒトへの応用を前提とした際,げっ歯類でなく水棲生物を実験動物として用いる利点やヒトと水棲生物の生理機能および重力に対する応答反応の違い等について検討することの重要性についても議論したい。