宇宙航空環境医学 Vol. 48, No. 4, 113, 2011

若手の会シンポジウム

1. Overview·げっ歯類を用いた基礎研究の重要性

河野 史倫

大阪大学 医学系研究科

Importance of basic studies using rodents

Fuminori Kawano

Graduate School of Medicine, Osaka University

日本人宇宙飛行士のISS滞在が頻繁になった現在,国内で研究·開発された医学的知見を軌道上での処方や帰還後のリハビリテーション法として宇宙飛行士たちへ応用することは,当該分野に従事する若手研究者にとっては当面の目標である。滞在がさらに長期化するに従って特に重要視しなければならない生理機能やカスタムメイド医療の確立も,今後検討を進めるべき事項である。本シンポジウムでは,ヒトおよび実験動物を用いた宇宙医学研究の今後の方向性について,若手研究者の意見をまとめた。
 微小重力環境暴露による生体への影響は,重力そのものよりむしろ重力レベルの変化による生理応答が引き金となるものがほとんどであるため,ヒトに近い生理応答を示すげっ歯類を用いた研究が妥当である。地上においても,想定し得る生理応答を模した実験モデルやそれらのメカニズムを探る基礎研究が,将来の宇宙医学の基盤確立のためには重要であると考えられる。