宇宙航空環境医学 Vol. 48, No. 4, 104, 2011

公開シンポジウム-1

「社会に役立つ宇宙医学」

3. 骨と筋肉

寺田 昌弘

宇宙航空研究開発機構 ISS科学プロジェクト室

Bone and Skeletal Muscle in Space

Masahiro Terada

ISS Science Project Office, Japan Aerospace Exploration Agency

宇宙環境によって,我々人体は様々な影響を受ける。特に,微小重力環境下では自重(地上で生じていた自らの体重による負荷)が減少することによって,下肢骨格筋が萎縮し,骨がもろくなることが知られている。この筋骨の衰えは,スペースシャトルのような短期ミッションでも生じる。現在のように多くの宇宙飛行士が国際宇宙ステーションに長期滞在している状況では,これらの問題解決が益々重要となってくる。また,宇宙飛行士の下肢に生じている現象は,地上における長期臥床患者等に生じている現象と類似している。将来的には,宇宙で解明されたメカニズムから高齢化社会に応用できる技術開発につながることを期待する。
 本発表では,現在宇宙医学分野で筋骨に関するどのような研究がされているのかを紹介した。また,それらをどのように応用して一般社会に貢献できるのかを紹介した。多くの方に,宇宙医学の重要性を理解してもらい,この分野の研究の活性化等につながればと期待する。