宇宙航空環境医学 Vol. 48, No. 4, 100, 2011
学会シンポジウム |
「日本の有人宇宙飛行の過去から将来へ」 |
4. 宇宙飛行士の精神心理支援及び研究
井上 夏彦
宇宙航空研究開発機構 宇宙飛行士健康管理グループ
Behavioral health and performance support and research programs for ISS crew
Natsuhiko Inoue
Astronaut Medical Operations Group, Japan Aerospace Exploration Agency
現在国際宇宙ステーション(ISS)には,6人の宇宙飛行士が約半年程度の滞在を行っている。先頃引退したスペースシャトルミッションでは宇宙滞在は2週間程度であったためそれほど問題となってこなかったが,これほど長期間の宇宙滞在ミッションを成功裡に終えるには,身体的健康管理とともに精神心理支援の果たす役割が大きい。ISSのような特殊な閉鎖隔離環境では,外界からの隔絶感や危険な環境下で生活することの不安感など通常経験しないようなストレッサーに曝されるが,ストレスを解消するためのリソースは非常に限られてくる。このため,ISSでは国際共同で地上とのコミュニケーションツールや定期的な物資の提供などの精神心理支援が行われている。また,近い将来実施の可能性がある月·火星探索ミッションにおいては,より一層自立的な精神心理状態の評価ツールや,リアルタイム交信不能時のストレス解消手法についての研究が求められる。
本シンポジウムでは,現在国際宇宙ステーション宇宙飛行士に対して行われている精神心理支援手法を紹介すると共に,これまでJAXAで行われた精神心理選抜·支援に向けた研究について報告する。