34.　ヘッドダウンティルトでの中心窩における脈絡膜厚と網膜厚 | Subfoveal choroidal thickness and foveal retinal thickness during head-down-tilt

一般演題

34.　ヘッドダウンティルトでの中心窩における脈絡膜厚と網膜厚

篠島　亜里^1,2,3，岩﨑　賢一¹，青木　健¹，小川　洋二郎¹，柳田　亮¹，湯澤　美都子^2,3

¹日本大学医学部　社会医学系　衛生学分野
²日本大学医学部　視覚科学系　眼科学分野
³日本大学駿河台病院

Subfoveal choroidal thickness and foveal retinal thickness during head-down-tilt

Ari Shinojima^1,2,3, Ken-ichi Iwasaki¹, Ken Aoki¹, Yojiro Ogawa¹, Ryo Yanagida¹, Mitsuko Yuzawa^2,3

¹Division of Hygiene/Space Medicine, Department of Social Medicine, Nihon University School of Medicine
²Division of Ophthalmology, Department of Visual Science, Nihon University School of Medicine
³Surugadai Nihon University Hospital

【背景】　宇宙飛行では，微小重力曝露の影響で，頭部方向へ体液がシフトすることが知られているが，その影響で眼静脈圧が上昇し，脈絡膜厚に影響を与える可能性がある。しかしながら，今までに，宇宙飛行中や模擬微小重力環境において脈絡膜厚を測定したという報告はない。近年，非侵襲的に脈絡膜厚を測定できる解像度の高いスペクトラルドメイン光干渉断層計および方法が登場したので，我々はこの機器を用いて，模擬微小重力環境下（ヘッドダウンティルト:HDT）における脈絡膜厚の変化を評価した。その際，仮説としては，HDTにより眼静脈にかかる静水圧が増加することで，眼静脈圧が上昇し，脈絡膜静脈の拡大·血液量増加が起こり，脈絡膜厚が厚くなると考えた。
　【方法】　健康成人10名を募集し，全身的·眼科的に疾患のない9名（−6Dを超える強度近視者を除いた男性7名，女性2名）において，座位，10度HDT 15分，30分の時点での中心窩下脈絡膜厚および中心窩網膜厚，血圧，脈拍を測定した。また，各段階での心臓─眼間の静水圧較差の推定と，座位，HDT 30分での眼圧測定も行った（HDT 30分で眼圧を測定出来た者は5人）。
　【結果】　脈絡膜厚（±S.E.M.）は時間の経過と共に有意に増加した（座位;300±31 μm，HDT 15分;315±31 μm，HDT 30分;333±31 μm）。一方，網膜厚（±S.E.M.）は変化を示さなかった（座位;228±9 μm，HDT 15分; 228±10 μm，HDT 30分;228±9 μm）。眼圧（n=5）は座位（14±1 mmHg）からHDT 30分（21±2 mmHg）で有意に増加した。
　【結語】　網膜厚は有意な変化が認められないにも関わらず，脈絡膜厚および眼圧はHDT後有意な増加を認め，微小重力曝露により脈絡膜が肥厚する可能性が推察された。ひいては視機能が変化する可能性が考えられた。