宇宙航空環境医学 Vol. 48, No. 4, 61, 2011

一般演題

11. 長期宇宙空間保管による宇宙食栄養成分の変化(第1報)

松本 暁子,相羽 達弥,田山 一郎,石田 暁,山本 雅文,向井 千秋

宇宙航空研究開発機構 宇宙医学生物学研究室

Changes of nutrients in space food after long-duration spaceflight (Vol. 1)

Akiko Matsumoto, Tatsuya Aiba, Ichiro Tayama, Satoru Ishida, Masafumi Yamamoto, Chiaki Mukai

Space Biomedical Research Office, Japan Aerospace Exploration Agency

国際宇宙ステーション(ISS)では,日本実験棟「きぼう」の建設も完成し,日本人宇宙飛行士のISSでの長期滞在が次々と進行中である。JAXAは飛行士の宇宙滞在中の食事として宇宙日本食を開発したが,宇宙環境では宇宙放射線等の影響を受ける為,我々は,長期間宇宙環境で保管する宇宙食中の成分変化についての研究を開始した。研究の方法として準備したサンプルは,JAXAが認証した宇宙日本食のうち,代表的な食品8種を選びSpace Food Nutrient Kit としてJAXA Bio PADLES(radiation dosimeter)も一緒に梱包した。軌道上実験用サンプルは,2010年4月5日米国ケネデイ宇宙センターからSpace Shuttle Discovery(STS-131/19A)にて打ち上げられ,その後ISS日本実験棟「きぼう」内で保管され,Space Shuttle Endeavour(STS-134/ULF-6)にて2011年6月1日に地球に帰還した。地上コントロールサンプルは2セット用意し,1つは実験開始時に分析,もう1つは筑波宇宙センター内で保管し,軌道上実験用サンプルを回収後に同時に分析した。スペースシャトル計画の延期に伴い,軌道上実験用サンプルは結果的に1年以上,宇宙環境に暴露されたことになる。現在,長期宇宙環境保管による宇宙日本食サンプル中の栄養成分等変化について解析·検討を進めており,最終的な結果は今後報告することとしたい。