宇宙航空環境医学 Vol. 48, No. 4, 57, 2011

一般演題

7. 長期宇宙滞在ミッションにおけるコミュニケーションツールの発達

井上 夏彦

宇宙航空研究開発機構 宇宙飛行士健康管理グループ

Development of communication tool for prolonged space mission

Natsuhiko Inoue

Astronaut Medical Operations Group, Japan Aerospace Exploration Agency

長期宇宙滞在ミッションにおいては,宇宙飛行士の精神心理的ストレス解消手段は地上と比べて限定的なものにならざるを得ない。その中で特に重視されているのは,日常生活からの隔離·孤絶感によるストレスを解消するためのコミュニケーションツールである。宇宙滞在の黎明期には,地上との交信ツールとしてはハムラジオ(アマチュア無線)がよく知られていたが,現在ではこれ以外にもテレビ電話やIP電話が可能となり,宇宙飛行士のストレス解消に役立っている。また,最近のIT技術の発達により,飛行士の自宅のコンピュータを使って家族と交信をすることも可能となったばかりか,軌道上にいながらにしてインターネットにアクセスができるようになり,このことは軌道上の宇宙飛行士に対して新たな能動的なストレスの解消手段となっている。