宇宙航空環境医学 Vol. 47, No. 4, 92, 2010

シンポジウム/宇宙航空医学認定医セミナー

「適性と選抜」

4. 飛行検査の概要及び戦闘機·輸送機等への選抜要領について

上田 知元

航空自衛隊第3 輸送航空隊司令

Summary of flight examination, and selection of fighter and cargo pilot

Tomoyuki Ueda

Commander of 3rd Tactical Airlift Wing, JASDF

航空自衛隊の操縦者の採用においては,身体検査,心理検査及び飛行試験を実施している。飛行試験は,山口県と静岡県の2カ所でT-7練習機を使用して4回の飛行を行い,飛行感覚·判断力,理解力等を検査している。その後の飛行教育課程の途中で罷免された学生に飛行検査の成績が低いものが多いことから,飛行試験の信頼性は,概ね高いものと考えている。しかしながら,少子化及び高学歴化等の影響により,航空自衛隊の操縦者希望者が減少している現状において,限られた人材を有効に活用するために,さらに飛行検査の精度を向上させる必要がある。精度の向上のためには飛行試験のデータの蓄積や分析によるものや,コンピュータ検査の導入等が検討されているが,具体的な方策としては確立していない。
 次に戦闘機及び輸送機等への選抜要領であるが,明文化されたものはない。操縦者を養成する中で,戦闘機及び輸送機等に選抜しているが,選抜時期は,最初の飛行教育課程であるT-7(60時間)課程終了時であり,考慮している事項のいくつかは次のとおりである。
 1. 身体的問題の有無(戦闘機の機動に耐え得るか等)
 2. 本人の希望 
 3. T-7課程中の成績(空中感覚や判断力等)
 4. 精神的要素(闘志や協調性等)