宇宙航空環境医学 Vol. 47, No. 4, 58, 2010

一般演題 

14. 加速度訓練中の心室性期外収縮発生パターンの解析

久田 哲也1,木村 幹彦2,武井 英理子1,乾 多久夫2,福島 功二2,吉村 一克2,緒方 克彦1,櫻井 裕1

1防衛医科大学校
2航空自衛隊 航空医学実験隊

Patterns of premature ventricular contractions occurrence during high-G training

Tetsuya Hisada1, Mikihiko Kimura2, Eriko Takei1, Takuo Inui2, Koji Fukushima2, Kazuyoshi Yoshimura2,Katsuhiko Ogata1, Yutaka Sakurai1

1National Defense Medical College
2Japan Air Self-Defense Force Aeromedical Laboratory

【背景および目的】 心室性期外収縮(PVC)は一般的に生理的な不整脈と考えられているが,QT延長症候群やBrugada症候群のような重篤な遺伝性心疾患では,PVCのような心室性不整脈の発生が心室頻拍や心室細動のトリガーとなることが埋め込み型除細動器のデータ解析などより明らかにされている。これまでの研究で高G負荷のかかる加速度訓練で様々な不整脈が多く発生することが広く知られているが,その発生パターンは詳細に検討されていない。このような背景より,本研究は加速度訓練に参加した訓練生の心電図を解析し,高G負荷前後のPVCの発生パターンを明らかにすることを目的とした。
 【方法】 2009年4月から2010年3月に航空自衛隊航空医学実験隊における戦闘機操縦者向け加速度訓練に参加した60名の男性パイロット(24.2±2.1歳)を対象とした。耐Gスーツの装着なしに実施した0.1 G/秒でG負荷が上昇するgradual onset runs(GOR)と 1.0 G/秒でG負荷が上昇するrapid onset runs(ROR)の2つのパターンの加速度訓練中について,high-Gz phase(Gz増加中又は高Gz持続中)とrecovery phase(Gz減少中又は終了後1分間)における心電図上のPVC発生パターンを解析した。GORとRORのパターン間で各phaseのPVC発生比率についてはFisherの正確検定を用いて比較検証した。
 【結果】 GORパターンにおいては合計27回(high-Gz phase 14回,recovery phase 13回),RORパターンでは40回(high-Gz phase 23回,recovery phase 17回)のPVC発生を認めた。GORとRORにおける各phase間のPVC発生比率に有意差を認めなかった。
 【結論】 本結果よりPVCはGz増加時のみならずGz減少時にも多く発生することが明らかになった。