宇宙航空環境医学 Vol. 47, No. 4, 52, 2010

一般演題 

8. 空港クリニックにおける最近5年間の疾患動向 

村越 秀光,浅野 悦洋,岩瀬 龍之,赤沼 雅彦

日本医科大学成田国際空港クリニック

Discussion of disease in the past 5 years at the Airport Clinic

Hidemitsu Murakoshi, Yoshihiro Asano, Tatsuyuki Iwase, Masahiko Akanuma

Nippon Medical School Narita International Airport Clinic

【緒言】 日本医科大学成田国際空港クリニックは2005年4月から2010年3月までの5年間で73,462名の外来患者に対応した。空港クリニックにおいて診療を行った疾患動向について検討した。
 【対象】 症例総数は73,462例,うち空港勤務者42,481例(57.8%),旅行者22,958例(31.2%),航空機乗務員4,519例(6.2%),その他3,504例(4.8%),また外国人は6,641例(9.0%)であった。
 【結果】 旅行者では消化管疾患が最も多く6,792例 (29.6%),次いで呼吸器疾患5,366例(23.4%),外傷3,148例(13.7%)であった。また受診者数は平成17年,平成21年との比較で25%減少し,感染症が平成20年,平成21年の前年度比で143例から318例と2.2倍以上に増加した。空港勤務者では呼吸器疾患が最も多く14,535例(34.2%),次いで外傷5,994例(14.1%),消化管疾患4,845例(11.4%)であった。受診者数は平成17年,平成21年との比較で約28%減少し,感染症は157例から249例と約1.6倍に増加した。航空機乗務員では呼吸器疾患が最も多く1,607例(35.6%),次いで外傷760例(16.8%),消化管疾患668例(14.8%)であった。受診者数は平成17年,平成21年との比較で約40%減少し,感染症が18例から90例と約5倍増加した。外国人では呼吸器疾患が最も多く1,678例(35.3%),次いで消化管疾患1,226例(18.5%),外傷1,077例(16.2%)であった。受診者数は平成17年,平成21年との比較で3.5%増加しており,感染症が21例から40例と約2倍増加した。
 【考察】 空港クリニックにおける受診者数の減少は,空港勤務者についてはクリニックのある第2ターミナルビルの勤務者数が平成17年度に比較すると20%減少しており,勤務者数の減少が主因と考えられた。旅行者については国際線で22.4%増加,国内線においても22.8%利用者数の増加傾向のなか,旅行者の受診者数が25%減少した。外国人の受診数は増加しており,旅客層の変化又は日本人旅客の海外旅行慣れ等が考えられるが,さらなる検討が必要と思われた。疾患別で感染症,とりわけインフルエンザの増加については平成17年度91例(22.6%)から平成21年度272例(85.5%)に3倍に増加したがこれは新型インフルエンザの影響によるものと考えられた。
 【結語】 最近5年間の空港クリニックにおける受診者の疾患動向について検討し報告した。新型インフルエンザの影響でインフルエンザによる感染症が増加した。また旅行者,空港勤務者などの受診者が減少している。