宇宙航空環境医学 Vol. 47, No. 4, 45, 2010

一般演題

1. 足踏み平衡機能検査の偏倚について

野村 泰之,戸井 輝夫,池田 篤生,増田 毅,鴫原 俊太郎,池田 稔

日本大学医学部 耳鼻咽喉·頭頸部外科学分野

Deviation tendency of JAY’s step test

Yasuyuki Nomura, Teruo Toi, Atsuo Ikeda, Takeshi Masuda, Shuntaro Shigihara, Minoru Ikeda

Department of Otorhinolaryngology-Head and Neck Surgery, Nihon University School of Medicine

【目的】 以前の本学会でNASAジョンソン宇宙センターにおける足踏み平衡機能検査の,米国人による右方偏倚を報告し考察した。今回は日本人被験者を用いて測定し,差異の有無をみることとした。
 【対象·方法】 日本人の健常成人被験者20名を用いて米国人の時とほぼ同様の方法で,定律·遮眼·耳栓使用での足踏み検査を施行した。福田式足踏み検査の原法では上肢を挙上しているが,我々はより自然な体勢での足踏み歩行をみるため上肢も自然に下げた姿勢でおこなっている。日本めまい平衡医学会の足踏み検査·判定と解釈に準じて,靴は脱いで3回施行している。遮眼ゴーグル,耳栓を装着し,電子メトロノームに合わせて1分100歩の歩調で1分間その場での足踏みをおこない,到達点床面における進行方向,X,Y座標などを測定する(JAY’s step test)。
 【結果·考察】 全体平均としては米国人の時のような右方偏倚は認めず,従来の日本の正常値内におさまった。しかしながら米国人の時と同様に個人差は大きく認められ,個々人の平衡機能のトレーニング効果や前庭代償過程ならびに可塑性をみるには,少なくとも定律·遮眼·耳栓使用といった一定の条件下での検査実施が望ましいと考えられた。