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宇宙航空環境医学 Vol. 46, No. 4, 141, 2009

講演

2. 旅行者の不安と提案

佐々木 茂

ANA セールス株式会社 販売サポート部長

Anxiety among Travelers : Its Strategic Proposal

Shigeru Sasaki

ANA Sales Co., Ltd. Sales Support & Training

 1. 海外旅行
 新型インフルエンザが発症した直後は,まだ「外国で 発症している病気」という認識であった。しかし,次第 に新型インフルエンザが様々な地域で発症が確認され始 めるにつれ,ツアーのキャンセル依頼が増加した。機内 検疫の開始や,パニック映画の1シーンのような様子が 報道され,世間に「新型インフルエンザ=危険な病気= 死に至る」という強い気持ちが植えつけられたのが原因 であるとおもわれる。特に企業については,「海外出張禁 止」を唱える企業が増え,まずはビジネス需要から利用 が減少し始めていった。その後,一部企業では「私的な 海外旅行も禁止」を決める企業も増加をはじめ,ますま すその影響が拡大していった。
 2. 国内旅行
 関西で発症が確認され,しかも海外渡航未経験者であっ たことが報道されると関西方面を中心にキャンセル申込 みが殺到した。連日の「マスク姿の通勤風景」「マスク不 足騒動」など,新型インフルエンザの恐怖を煽る報道が 連日続き,「関西=新型インフルエンザの蔓延地=危険地 域」と言った思いがお客様に深く植え付けられた。
 3. 訪日旅行
 「マスク姿」「機内検疫風景」が各国メディアに紹介され, 「日本=新型インフルエンザ発症国」と認識され「日本= 危険な国」と思われ訪日旅行者は激減している。
 4. お客様の声
 個人旅行,ビジネス渡航ともに「感染が怖い」「会社か ら渡航禁止令がでた」「現地から日本からの出張だけが断 わられた」といった声が出た。訪日旅行については「日 本は危険な国」,「日本が最大の汚染国」と言った理由が 大半を占めた。
 5. マスコミと政府の対応のあり方
 報道では,連日の機内検疫,マスク姿など,恐怖を煽 る報道は多かったが,新型インフルエンザの詳細な症状 や,病気そのものの説明などがほとんどなく,非常に危 険極まりない病気という意識を深く印象つけてしまった。 海外メディアでは新聞報道でSwine Flu(豚インフル)が いつのまにかJapanese Flu となっていた事例も紹介されて いる。
 6. 政府の対応
 マスコミ報道と同じで,恐怖を煽っても,病気そのも のの説明がなかった。
 感染防止の有効策,症状の特徴,季節性インフルエン ザとの違いといった発表がなく,ただ「落ち着いて」と 連呼するばかりで,余計に恐怖を想像させていったよう に思う。
 新型インフルエンザの効果的予防策,季節性インフル エンザとの違い,症状の特徴を繰り替えし報道すること で,予防しながら生活や余暇を楽しみ報道や対応に転換 されることを強く望みます。