宇宙航空環境医学 Vol. 46, No. 4, 120, 2009

シンポジウム

2. 温熱刺激による損傷骨格筋の再生促進には白血球または骨髄細胞が関与している

大平 充宣1, 2,上 勝也1,後藤 勝正3

1大阪大学医学系研究科
2大阪大学生命機能研究科
3豊橋創造大学保健医療学部

Involvement of leukocytes and/or bone marrow cells in heat-stress related regeneration of injured muscle

Yoshinobu Ohira1, 2, Katsuya Kami1, Katsumasa Goto3

1Graduate School of Medicine, Osaka University
2Graduate School of Frontier Biosciences, Osaka University
3School of Health Sciences, Toyohashi SOZO University

 筋損傷後は患部の冷却が一般的な処方として実施され ている。しかし,Kojima ら( J. Orthop. Sci., 2007 他) は逆 に温熱刺激を加えた方が損傷からの回復または再生が促 進されると報告している。温熱刺激により筋衛星細胞の 活性化や数の増加が誘発され,核によるタンパク質合成 が刺激されることも明らかになっている。温熱刺激は筋 細胞におけるheat shock protein( HSP) 発現を亢進させる ことも報告されているが,筋再生機構の詳細は未だに不 明である。そこで,bupivacaine( BPVC) 注入により損傷 を誘発させたラットヒラメ筋が,温熱刺激に対して如何 なる反応をするか筋横断切片において分析した。その結 果,BPVC 注入後,1,3,7 日後に温熱刺激(42℃,30 分) を加えると筋再生が促進された。これらの筋にはHSP72 を発現する細胞が多く認められたが,これらの細胞は筋 核や衛星細胞ではなく,白血球および骨髄細胞であると いう結果を得たので,これらが関与した筋再生機構に考 察を加えてみたい。  
 本研究は日本学術研究会科学研究費補助金(基盤S, 19100009)の助成を受けて実施された。