宇宙航空環境医学 Vol. 46, No. 4, 113, 2009

一般演題

41. 空港クリニックにおける外傷例の検討

村越 秀光,浅野 悦洋,井上 毅,岩瀬 龍之,赤沼 雅彦

日本医科大学成田国際空港クリニック

Study of injury case at the airport clinic

Hidemitsu Murakoshi, Yoshihiro Asano, Tuyoshi Inoue, Tatsuyuki Iwase, Masahiko Akanuma

Nippon medical school Narita international airport clinic

 緒言: 日本医科大学成田国際空港クリニック(空港ク リニック)において,最近3 年間に外来受診した44,733 症例のうち,このうち外傷例について調査,検討した。  
 対象: 2006 年4 月から2009 年3 月までの3 年間に当空 港クリニックに来院した,外傷例6,602 例(14.8%)で, これらを研究対象とした。  
 結果: 空港勤務者は3,872 例(58.6%)で最も多く,次 いで旅行者1,939 例(29.4%),航空機乗務員501 例(7.6%), その他290 例(4.4%),外国人は731 例(11.1%)であった。 年代別にみると20 歳代が最も多く2,038 例(30.7%),次 いで30 歳代1,390 例(21.1%),50 歳代1,095 例(16.6%), 40 歳代954 例(14.5%),60 歳代462 例(7.0%),10 歳代 240 例(3.6%),70 歳以上237 例(3.6%),10 歳未満196 例(3.0%)であった。また外国人でも,20 歳代が最も多 く290 例(39.7%), 次いで30 歳代129 例(17.6%),40 歳代121 例(16.6%),50 歳代93 例(12.7%),60 歳代, 10 歳未満がともに35 例(各4.8%),70 歳以上が22 例 (3.0%),10 歳代6 例(0.8%)であった。  
 考察: 空港関係者の内訳は脊椎疾患314 例(8.1%),熱 傷255 例(6.6%), その他3,303 例(85.3%) であった。 重症度では軽症3,803 例(98.2%),中等症69 例(1.8%) で作業中の事故,転倒,転落が多く見受けられた。旅行 者の内訳は脊椎疾患196 例(10.1%),熱傷191 例(9.9%), その他1,552 例(80.0%)であった。重症度では軽症1,841 例(95.0%),中等症98 例(5.0%)であった。航空機乗務 員の内訳は脊椎疾患126 例(25.1%),熱傷70 例(14.0%), その他305 例(60.9%)で,これは航空機の機内環境によ るものと考えられた。重症度では軽症495 例(98.8%), 中等症6 例(1.2%)であった。また外国人では脊椎疾患 128 例(17.5%),熱傷65 例(8.9%),その他538 例(73.6%) であった。重症度では軽症714 例(97.7%),中等症17 例 (2.3%)であった。
 結語: 当空港クリニックにおいて,最近3 年間の空港 クリニックの外傷例について検討した。今回,外傷例で は空港勤務者が最も多く,次いで旅行者,航空機乗務員 と続いた。また重症度では軽症6,425 例(97.3%),中等症 177 例(2.7%)で,いずれも中等症以下であった。航空機 乗務員において,脊椎疾患が25%,熱傷14% と高率にみ とめられた。これは職場環境,機内環境が関与している のではないかと考えられた。使用機器の改善,改良など 予防措置が今後とも,より重要であると考えられる。