宇宙航空環境医学 Vol. 46, No. 4, 95, 2009
一般演題
23. 頭部下方傾斜において前庭が動脈圧調節機構に及ぼす影響
松尾 聡1,中村 陽祐1, 2,細貝 正江1,河合 康明1
1鳥取大学医学部適応生理学分野
2松江赤十字病院耳鼻咽喉・頭頸部外科
Vestibular influence on blood pressure responses to head-down postural change
Satoshi Matsuo1, Yosuke Nakamura1, 2, Masae Hosogai1, Yasuaki Kawai1
1Division of Adaptation Physiology, Faculty of Medicine, Tottori University
2Department of Otolaryngology, Matsue Red Cross hospital
pitch 面で頭部が下になるように体位変換(Head-down
rotation,HDR)すると,圧受容器にかかる静水圧が上昇
するとともに前庭入力が変化する。研究の目的はHDR に
おける神経性調節機構を解明することである。ウレタン
麻酔下で行った我々の実験では,45 度HDR を行うと交
感神経活動が低下し動脈圧が一過性に低下した。前庭破
壊後この動脈圧低下は消失した。そこでHDR によって前
庭が刺激された結果,交感神経が抑制され,動脈圧が低
下したと考えた。この推察を覚醒状態で検証するため実
験を行った。
実験にウサギを用いた。動物の頭部をハーネスで固定
し,暗所で45 度のHDR 負荷を行った。覚醒状態でHDR
中の頸部交感神経活動と動脈圧の変化を観察し,麻酔下
で行った実験結果と比較した。
覚醒状態でHDR を行うと麻酔下の結果と異なり,平均
動脈圧は一過性にbaseline から9±3%(n=4)上昇した。
頸部交感神経活動は動脈圧上昇に先立ち上昇した。前庭
破壊後2 日後には動脈圧上昇がコントロールと比べ
1.5±0.6 秒早く起こった。この結果は,HDR 負荷で前庭
を介する交感神経抑制が生じることを示唆しており,麻
酔下の結果と一致した。破壊後5 日後に動脈圧上昇の時
間差は消失した。