宇宙航空環境医学 Vol. 45, No. 4, 179, 2008

航空会社の対応

島田 敏樹

全日本空輸梶@東京健康管理センター

Measures of airline

Toshiki Shimada

All Nippon Airways Co., LTD.

本年4月,政府は水際対策ガイドライン案1) を発表し,感染症発生国との渡航に関しての原則を提示した。この中で発生国との航空便は原則運航停止とされているが,過去の邦人退避事例では,チャーター便など航空機を利用するオペレーションがほとんどである。この点に鑑みて弊社では,WHOの定めるパンデミックフェーズ(6段階)に基づき,新型インフルエンザに対してフェーズ4が宣言された後,感染症の国内への侵入・拡大を極力遅らせるための対策を講ずることにより,乗客ならびに社員とその家族を感染から守ること,また可能な限り航空運送事業の継続を図ることを基本原則とした,社内体制の構築を開始している。
 【国内・海外事業所での対応】
 社内に新型インフルエンザ対応本部を設置し,予防対策の整備,防疫資材の確保などによる新型インフルエンザへの感染防止策を実施する。またパンデミックフェーズの状況変化に対応した運航方針の決定,合わせて全社的新型インフルエンザ対応マニュアルに沿って,各部門別に施策調整,行動及び実施確認を行う。
 【空港及び機内での対応】
 発生国において新型インフルエンザの発症もしくは疑いのある者は搭乗不可とする。機内搭乗後の乗客に該当者が判明した場合は,IATAが策定した「感染症疑い乗客への対応ガイドライン2) に沿って対応し,検疫所からの指示に従う。
 厚生労働省が定める「新型インフルエンザに関する検疫ガイドライン3) により,フェーズ4の段階において,感染国と指定された国からの便は,すべて検疫強化空港へ集約される。日本入国の際,疑いのある者は検疫係官によりPCR等の検査が行われ,陽性と判断された場合は,10日間の停留措置がなされる。また新型インフルエンザ患者と確定した場合は,対応施設への隔離措置が実施されるほか,当該便の乗客名簿作成,機体消毒,運航乗員・客室乗務員の自宅待機による健康状態の確認を行う予定としている。
参考文献
 1) http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/houkoku/080409siryou2.pdf
 2) Suspected communicable disease ; General guideline for cabin crew. Montreal, International Air Transport Association, 2005.
 3) http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/pdf/09-02.pdf